いまさら聞けない自動車の動力源の話 ICE編 1:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)
ここ最近、クルマの話題で、いろいろと耳慣れない単語が増えている。ICEやレンジエクステンダーやシリーズハイブリッド、マイルドハイブリッドなど、分かるような分からないような単語が多い。実はITmediaビジネスオンラインの編集部でも「クルマの記事は難しい」という声が出ているらしく、一度おさらいをしておこう。
ここ最近、クルマの話題で、いろいろと耳慣れない単語が増えている。ICEやレンジエクステンダーやシリーズハイブリッド、マイルドハイブリッドなど、分かるような分からないような単語が多い。実はITmedia ビジネスオンラインの編集部でも「クルマの記事は難しい」という声が出ているらしく、一度おさらいをしておいた方がいいということになった。
ただ、こういう単語をちゃんと理解するためには、相当基礎までさかのぼって段階を踏んでいかなくてはならない。おそらく何回かの連載になるだろうが、まずは内燃機関の話から始めたい。
分かっている人にはいまさらという感じがするかもしれないが、基礎的な単語が明確に定義されると、以後の話がよく分かるようになる。
- ICE編1 いまさら聞けない自動車の動力源の話
- ICE編2 53年排ガス規制との戦い
- ICE編3 日本車のアメリカ進出
- ICE編4 ターボの時代
2つの内燃機関 ガソリンとディーゼル
クルマにおける内燃機関とは、一般的にいってガソリンエンジンとディーゼルエンジンのことだ。エンジン内部の燃焼室でガソリンや軽油を燃やし、その燃焼圧力をピストンで受けて回転力に変換する動力装置だ。内燃機関は英語で、Internal Combustion Engineと呼ばれるので、略してICEなどとも呼ばれる。
内燃機関があるからには外燃機関もある。こちらは英語でExternal Combustion Engineというが、今のところ国内ではECEとは呼ぶケースは見かけない。
外燃機関の代表は蒸気機関である。水を通した管を外部から加熱する。いわゆるボイラーだ。管内の水をこの熱で気化させて水蒸気を作り、体積や圧力が上昇した水蒸気でピストンやタービンを動かして動力を取り出す。
産業革命当時の蒸気機関は、建物ひとつが動力装置という大がかりなものだった。あの巨体を誇る蒸気機関車ですら、当時としては技術の粋を凝らした気鋭のコンパクトシステムであることから考えても、自動車とは相性が悪い。車載できるサイズまで無理して小型化した場合、出力が足りなくなる。
もちろん未来的な外燃機関もあることはある。海上自衛隊の潜水艦の一部に使われているスターリングエンジンがまさにそれだ。ただし、熱力学的には優れていても、それを実現するための技術的ハードルが高く、1816年に発明されてから200年にわたってずっと夢のエンジンのままだ。
実際このシステムが搭載された「そうりゅう型」潜水艦でも、ディーゼルエンジンやバッテリーと併用して、限られた状況でのみスターリングエンジンが使われる。外気を導入し、排気を行わないと使用できないディーゼルエンジンの代わりに、どうしても潜行しつつ発電したい時に威力を発揮する。発電能力より隠密性を重視する局面のみで生きる仕掛けだ。ちなみにスターリングエンジンの発明者はスコットランドのロバート・スターリングである。
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