増えるストレス、見えた希望――コロナショックを機に、働き手の“反乱”が始まる?:パワーバランスの変化で問われる、価値観の刷新(1/5 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、働き手の意識が変わった。テレワークも浸透し、仕事よりも生活を重視する層が増えている。一方、企業の腰は重く、働き手との「意識の差」がどんどん開くかもしれない。このままいけば、抑圧されていた働き手の反乱が始まる可能性がある。
テレワークデイズなどのキャンペーンが推進されたり、残業の上限規制や年次有給休暇取得の義務化などを定めた改正労働基準法が施行されたりと、新型コロナウイルスが発生する前から働き方改革は進められてきました。
働き方を改革するには、休み方や生活の仕方も改革する必要があります。そんな流れに沿う形でさまざまな議論が行われてきた施策の一つに、男性の育児休業取得義務化があります。
日本経済新聞は7月1日、『男性育休「全員取得を」義務化も選択肢、内閣府懇談会』と題する記事を掲載しました。政府が設置した懇談会「選択する未来 2.0」がまとめた中間報告に、男性の育休取得義務化を提案する内容が盛り込まれたとするものです。
記事の元になった「選択する未来 2.0 中間報告」には、以下のように記されています。
世の中の性別役割分担意識を変える取組として、育児休業の分割取得を更に柔軟化し、テレワークと組み合わせつつ、家族の態様に応じ男女協力して子育てを行う多様な形を示していくこと、また、象徴的な取組として男性本人に対し、育児休業の取得の義務化や強力なインセンティブを与え、男性が全員取得する環境を目指すことも提案したい。
こうした男性の育休取得を義務化させようという部分がクローズアップされていますが、それはあくまで象徴的な取り組みの一つであり、最終目的は性別で役割分担されてしまっている人々の意識を変えることにあります。
本来、育休を取得するかどうかは、義務化などせずとも個々の家庭の事情に応じて選択できればよいはずです。しかし、それではこれまで長い間こびりついてきた性別役割分担意識を払拭(ふっしょく)できないことを受けて、男性の育休取得義務化という、いわば劇薬を投与する必要があるということだと思います。
男性の育休取得以外にも、これまでに植え付けられてきた意識や価値観などが強力な抵抗勢力となって推進されない施策はたくさんあります。『選択する未来 2.0 中間報告』には、そんな過去と向き合い、克服しようとする意志が明確に記されています。
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