「ブランク」や「ドロップアウト」は無意味ではない いま見直すべき、「採用の常識」とは?:「能力適合型社会」から「能力発見型社会」へ(1/5 ページ)
就職や転職の際に、多くの企業が重視するのが、その人材が社会や企業の求める能力や規範に合致しているかどうかという点だ。そのため、規範から外れていたり、「ブランク」や「ドロップアウト」の経験があったりする人が生きづらさを感じることも少なくない。ビースタイルホールディングスの調査機関「しゅふJOB総研」の所長を務め、「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催する川上敬太郎氏は、こうした社会を「能力適合型社会」とし、一人一人の能力の方へ着目する「能力発見型社会」への移行を提唱する。
ある日、お笑い芸人として19年も活動してきた方から聞いた次の一言に衝撃を受けました。
「芸人を辞めて就職活動したとき、19年の芸歴はブランクとしか見られませんでした」
その方は、知人の会社で営業職として就職が決まるまで、芸人として活動した20年近い期間がネックになって、就職活動に苦労したそうです。確かに、芸能界は一般社会のサラリーマンとは異なる、特殊な世界です。長く在籍すればするほど、“一般”的な感覚とのズレが大きくなってしまうと受け取られ、芸人としての活動期間は“ブランク”と見なされてしまったのかもしれません。
テレビをつけると、毎日のようにお笑い芸人として活躍している人たちの姿を目にします。その方たちの活躍は一概に“ブランク”とは見なされないはずですが、それはほんの一握りの事例にすぎません。芸人としての成功を夢見た多くの人たちは、どこかのタイミングで別の道を歩むことになります。そのとき、芸人としての活動期間(つまり“ブランク”)が長ければ長いほど、“一般”社会では忌避されてしまうのです。
しかしながら、ブランクというのは、とても冷たい言葉に感じます。筆者は2年間の大学浪人を経験していますが、その間ひたすら人生に悩み続け、全く勉強机に向かうことができずにいました。これも、世間から見れば“ブランク”と見なされる期間であり、両親のおかげでご飯だけは食べさせてもらえたものの、一般社会からはドロップアウトし、絶望感の中で道を見失っていました。
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