話題の「社員PC監視ツール」がテレワークを骨抜きにしてしまう、根本的理由:新連載・働き方の「今」を知る(1/4 ページ)
テレワークで従業員がサボらず仕事しているかを“監視”するシステムが話題になった。テレワークは本来「成果」を出すためなら「働く場所」を問わない制度のはず。こうしたシステムが出てくれば、テレワークが骨抜きになってしまい、生産性を高める「成果主義」が定着しない、と新田龍氏は指摘する。
新連載:働き方の「今」を知る
「働き方改革」という言葉が浸透し、日本でもようやく長時間労働などの慣行が見直されつつある。しかし、それでもまだまだ世にブラック企業は根強く存在する。また、あからさまな「ブラック企業」とはいえずとも、「それってどうなの?」と思えるような会社も数多く存在している。本連載では、ブラック企業アナリストとして、数多くの事例を熟知している新田龍氏が、タイムリーな労働問題を中心に、働き方の「今」にメスを入れていく。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、テレワークを導入する企業が増えている。しかし、社員の働きぶりを直接見ることができないことから、導入企業の多くが悩んでいるのが、
「社員がサボっているのではないか?」
「仕事の進捗状況が把握できないのでは?」
「社員の顔が見えず、コミュニケーションが困難になるのではないか?」
といったテーマだ。
そしてまさに先般、同様の悩みを解決する(?)方法を扱った報道が話題となった。概要としては以下の通りだ。
- テレワーク実施企業の中で、「社員の勤務状況を管理するためのシステム導入」が広がっている
- 具体的には、PCのデスクトップ上に、「着席」「退席」というボタンがあり、業務の開始/終了時や休憩時にそれぞれクリックするだけで、自動で勤務時間を管理するもの
- また、社員が「着席」ボタンを押して仕事をしている間、PCの画面がランダムに撮影されて上司に送信される仕組みもあるため、自宅で働く社員に一定の緊張感を持ってもらう効果がある
ちなみに当該記事中で、このシステムを利用している上司は「システムを通じて働きぶりが見えるため今のところテレワークは順調だ」とコメントしていた。確かに「自動勤怠管理機能」は便利かと思われるものの、ネット上では「作業画面自動送信機能」については「管理というより『監視』しているだけでは?」「これじゃ『リモートワーク』ではなく『リモートコントロールワーク』だ」との反応もあった。
オフィスへ出勤し、上司の目が届く範囲で仕事をするのであれば、社員の働きぶりは一目瞭然。しかし、テレワークにおいてはそれが物理的にチェックできないため、「とにかく社員を細かく管理しよう」という考えに至ってしまうことは仕方ないのかもしれない。実際、テレワークに踏み出そうとする企業経営者から「社員がサボるのでは……?」という心配や相談はよく伺う。そんなとき、私はこのように回答している。
「それはリモートワークのせいじゃありません。サボる人は出勤していようが、リモートワークであろうがサボります。『サボる』ことを過剰に問題視することが問題なんです」
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