話題の「社員PC監視ツール」がテレワークを骨抜きにしてしまう、根本的理由:新連載・働き方の「今」を知る(2/4 ページ)
テレワークで従業員がサボらず仕事しているかを“監視”するシステムが話題になった。テレワークは本来「成果」を出すためなら「働く場所」を問わない制度のはず。こうしたシステムが出てくれば、テレワークが骨抜きになってしまい、生産性を高める「成果主義」が定着しない、と新田龍氏は指摘する。
「サボらないこと」はそんなに重要?
これは別にサボっている人を擁護するわけではない。「サボっているかどうか」という仕事の「プロセス」部分ばかりを気にするあまり、本来重視すべき仕事の「成果」を見失っていやしないか? と申し上げているのだ。サボっていても成果を出せていれば問題ないし、サボらず真面目に勤務時間をいっぱいまで使って仕事に精を出しても、最終的に成果を出せないならばそれは問題だ。すなわち、サボることを過剰に問題視する会社や経営者・管理職は……
- それぞれの分野における「仕事の成果」について、定義も測定も評価もできていない
- 「成果を出す」ことについて、社員への動機付けや督励がない
というような状況であることが想像される。いわば、手段(サボらず真面目に働くこと)と目的(成果を出すこと)が入れ替わっている状態なのだ。
モノづくりや販売など、「投入した時間」がある程度成果につながる仕事を除けば、多くの事務仕事の成果は「時間」ではなく「結果」で測られるべきだろう。こなすべき仕事量が一定であれば、「ダラダラ残業しながら10時間かけてやる人」と、「効率的に進めて6時間で終わらせる人」では後者のほうが明らかに結果を出している。しかし、これまでの「オフィスに出社し、9時から17時まで仕事をする」スタイルの働き方では、前者のように残業したり休日出勤したりして、いかにも「常に仕事に取り組んでいる」様子を示すことが「仕事熱心」と捉えられてしまう。逆に効率的に仕事をすると「手抜きしている」「ヒマそう」と判断され、かえって「手が空いてるならこれも」とさらに仕事を積み増されるなど、割に合わない目に遭うことも少なくないようだ。
関連記事
- ロイヤルリムジン「乗務員600人全員解雇」で広がる波紋 単なるブラック企業か、それとも経営者の「英断」か
新型コロナで各産業が打撃を受けている。そんな中で、話題となったタクシー会社の「乗務員全員解雇」。物議をかもすなかで、業績の見通しが立たない状況における経営者の「英断」とする声も挙がっている。本当に従業員の利益に資する決断なのか? ブラック企業に詳しい新田龍氏が解説する。 - 新型コロナ危機、ANAと日産の融資申し込みはどうなる? 政府は大企業、中小企業支援で今何をするべきなのか
新型コロナの経済影響が長期化・深刻化している。このまま続けば、大企業の破綻によって連鎖倒産が引き起こされる可能性もありえる。筆者の大関暁夫氏は、特に航空業界と自動車業界が危険だと指摘する。 - 中小企業が新型コロナ下を生き抜くカギは「借金嫌い」の克服 中には「起死回生」となる業界も?
新型コロナ対策でさまざまな支援制度が出てきている。その中には「破格の条件」ともいえる融資制度も。平時は「借金嫌い」でも、緊急時には借金をいとわず、とにかく生き抜くことを考えるべきだと小売・流通アナリストの中井彰人氏は指摘する。あらゆる業界が対応を迫られているが、中には「起死回生」のチャンスとなっている業界も? - 新型コロナ「国民1人当たり10万円給付」以外でも知っておきたい、万が一のときに使える各種支援制度とは
新型コロナで大きな影響を受ける企業活動。全国に「緊急事態宣言」が発出された今、身を守るために知っておくべき各種支援制度とは? 新田龍氏が解説する。 - 「喫煙者は新型コロナにかかりにくい」 まさかの新説は本当か
アメリカやフランスの研究チームが、ちょっと信じられない研究結果を発表した。「喫煙者は新型コロナにかかりにくい」というのだ。まさかの新説の裏に何があるのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.