ロイヤルリムジン「乗務員600人全員解雇」で広がる波紋 単なるブラック企業か、それとも経営者の「英断」か:雇用保険手当の「不正受給」となる可能性も(1/4 ページ)
新型コロナで各産業が打撃を受けている。そんな中で、話題となったタクシー会社の「乗務員全員解雇」。物議をかもすなかで、業績の見通しが立たない状況における経営者の「英断」とする声も挙がっている。本当に従業員の利益に資する決断なのか? ブラック企業に詳しい新田龍氏が解説する。
先日、東京のタクシー会社「ロイヤルリムジン」が、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で業績悪化し、さらに政府が緊急事態宣言を出したことで今後も回復が見込めないため、グループ5社に約600人いる乗務員全員を解雇する、というニュースが入ってきて話題になった。
大々的に報道される前、一部SNS上では社長署名の社内文書と思われる画像が拡散しており、そこには次のように書かれていた。
「当社は生き残りをかけ、一旦事業を休止することを決断しました」
「混乱の中少しでも早く、皆様が円滑に失業手当をもらえるために決断した次第」
「タクシー事業の休業補償は歩合給と残業の給与体系のため、失業手当より不利」
「完全復旧した暁には、みんな全員にもう一度集まっていただき、今まで以上に良い会社を作っていきたい」
「全員クビ」とはかなり乱暴でひどい話のように思われるのだが、この社長の熱意が伝わったのか、ネット上では「目からうろこ」「そんなやり方があるとは」などと、むしろ称賛する声も多い様子だった。また、同じ状況に陥っている同業者や、他業種の経営者からも今回の決断は注目されていたようだ。そのポイントは3つある。
(1)倒産や破産などの会社が「なくなる」前提ではなく、あくまで「事業の一時的な停止」であること
(2)解雇はするものの、ウイルスの感染拡大が収束した段階で再雇用すること、その際に希望者は全員受け入れる、と「約束」していること
(3)このまま事業を継続して休業手当を支払ったり休業補償を得たりするよりも、一度解雇ということにして失業保険を受給するほうが、乗務員にとってかえって有利になると説明していること
すなわち、「会社側からの一方的なクビ宣告によって乗務員が路頭に迷う」のではなく、「経営者の苦渋の決断により、乗務員のために現時点で最善の方法を選択した」という形をとっているように見えるのである。
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