初週売り上げ、過去最高! 異例のロングスカートが生まれたワケ ヤフーと三越伊勢丹が見抜いた「隠れた欲求」:2.6倍売れた(1/3 ページ)
蓄えたデータを外部の企業にも開放し始めたヤフー。データを分析することで消費者の「隠れた欲求」を引き出し、商品開発を支援している。三越伊勢丹と一緒に生み出したロングスカートは、大ヒットを記録したという。
2018年1月、ヤフー代表取締役社長の座を前任の宮坂学氏から引き継いだ川邊健太郎氏は、着任に当たっての意気込みを「データドリブンカンパニーを目指す」と語った。その言葉通り、ヤフーはデータを活用したサービスの開発・改善に取り組み、さまざまな成果を上げてきた。そして19年には、蓄えたデータを外部の企業にも開放。データを分析することで消費者の「隠れた欲求」を引き出し、ヒット商品を生み出したという。
Yahoo!のデータを分析、どういうこと?
国内最大の検索サイト「Yahoo!」を運営するヤフーは、膨大な量の検索データを蓄積している。Q&Aサービス「Yahoo!知恵袋」の投稿データや、Yahoo!ショッピングの購買データ、さらには一部サービスで取得したユーザーの位置情報など、多種多様なサービスを通じて大量のデータを収集している。
これまで同社は、これらのデータを集計・分析し、自社のサービス開発や広告表示の最適化、メールマガジン配信の最適化などを実現した。その過程で蓄積したノウハウを生かし、外部のクライアント企業向けにも、ヤフーが保有するデータを活用したサービス「DS.INSIGHT」と「DS.ANALYSIS」を提供している。
DS.INSIGHTは、ヤフーが収集・保有するさまざまなデータのうち、主に「検索データ」と「ユーザー位置情報」を提供するものだ。データ集計・分析ツールを通じ、Yahoo! JAPAN IDを登録した会員が「どんな検索をしているのか」「それぞれの検索キーワードがどのぐらい検索されたのか」「それぞれの地域にどのぐらいの人がいるのか」「その地域に対してどこから移動してきたのか」といった統計データを、さまざまな角度から参照できる。これらのデータは、会員個人が特定できないよう匿名化して提供している。
主な用途について、ヤフーの寺田幸弘氏(データソリューション事業本部 クライアントソリューション部 マネージャー)は「データを細かく深掘りして分析するというよりは、世の中のニーズの動向をマスレベルで素早く把握するためのツールという位置付けになっています」と説明する。
一方のDS.ANALYSISは、マスの分析というよりは、各クライアント企業のデータ活用の目的に即した、より詳細なデータ分析ソリューションを提供する。検索情報や位置情報だけでなく、Yahoo!ショッピングの購買情報や決済情報など、より幅広いデータを使ってクライアント企業がそれぞれ抱える課題解決に役立つ知見を提供、提案も行う。
「例えば、『この商品を買った人はこの商品も買っている』といった併売分析を行ったり、『この商品を買った人は事前にこういうキーワードで検索している』というデータを基に購買行動の動機を分析したりするなど、ヤフーが保有するさまざまな種類のデータを組み合わせることで、これまではなかなか得られなかった新たな知見が得られるようになります。これらを基に、『このようなデータに着目するといいのではないか』『こんなアクションを取るといいのではないか』といった提言も、当社から提供しています」(寺田氏)
消費者が「本当に欲しかった」ロングスカート
これらのサービスを実際に導入し、成果を上げている企業の1つに、百貨店大手の三越伊勢丹がある。同社は、ECサイトで展開しているオリジナルアパレルブランド「arm in arm」の新商品開発に、DS.ANALYSISを導入した。
同ブランドは、座談会やアンケートなどを通じて顧客の声を聞き、その内容を商品開発に積極的に取り入れることで、「お客さまと一緒に創る」ことをブランドコンセプトにしていた。しかし座談会やアンケートだけでは、「顧客の潜在的なニーズを掘り起こしきれていないのではないか?」との問題意識があったという。
そこで、ヤフーが持つ膨大な検索データを分析すれば、ターゲット顧客がファッションアイテムに対して抱いている潜在的なニーズをあぶりだせるのではないかと考えた。
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