初週売り上げ、過去最高! 異例のロングスカートが生まれたワケ ヤフーと三越伊勢丹が見抜いた「隠れた欲求」:2.6倍売れた(3/3 ページ)
蓄えたデータを外部の企業にも開放し始めたヤフー。データを分析することで消費者の「隠れた欲求」を引き出し、商品開発を支援している。三越伊勢丹と一緒に生み出したロングスカートは、大ヒットを記録したという。
家電商品や美容商品の購買データを分析してみると、「スチーマー」「マッサージャー」「美顔器」といった商品が、前年比で売り上げを大きく伸ばしていることも分かった。このことから、外出自粛によりエステなどに行けないユーザーが、自宅でおこもり美容を行うためにこれらの商品を求めていることが分かる。
「アイマッサージャーの売り上げも伸びているのですが、購買者の検索キーワードを調べるとゲーム関連の検索を行っているユーザーが多いことが分かります。このことから、外出自粛でゲームのプレイ時間が増えて、目の疲れを感じている人が多いのだと推測されます。このように、人間の経験や勘だけではなかなか導き出せないような仮説をデータから導き出すことで、これまでにない発想のマーケティングや商品開発が可能になるのではないかと考えています」(寺田氏)
コロナ禍で、データ活用はどうなる?
しかしコロナ禍で、大きな壁にも直面している。7月時点で新型コロナウイルスの感染拡大はまだ予断を許さない状況であり、各企業ともマーケティング活動を縮小していることもあって、DS.ANALYSISを活用した商品開発プロジェクトも軒並み“足踏み状態”という。ただし中長期的に見た場合は、「データを使ったマーケティングや商品企画・開発のニーズは、必ずや高まるだろう」と寺田氏は自信をのぞかせる。
「コロナ禍が終息した後も、リアル店舗よりECで買い物を済ませたいと考える消費者は多いでしょうから、各企業とも今後はECを通じた売り上げや顧客獲得を重視するようになると思います。そうなれば、自ずとデータ活用の機運も高まってくるでしょうから、DS.INSIGHTやDS.ANALYSISのようなサービスのニーズも今後は増えていくと見ています」
現時点ではまだ、こうしたデータソリューションの価値を理解してくれる企業は少数派にとどまっているという。一般的なデータ活用の重要性については徐々に理解が広がっているものの、「あえてヤフーのデータを活用すること」についての価値は、まだ十分に理解を得られていないと寺田氏は述べる。
「『ヤフーのデータは宝の山なんです』と説明しても、『まずはその前に、自社データの活用の方が先決だから』という答えが返ってくることが多いです。確かに自社の顧客を囲い込むためには自社データの活用が先決ですが、新規顧客の獲得にはヤフーが持つマスのデータが役立つと考えています」(寺田氏)
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