本当に「幸せ」な業種とは? 仕事と幸福の奇妙な関係、大規模調査で迫る:パーソル総研と慶應大分析(2/2 ページ)
働く人の「幸せ」「不幸せ」度を調査。例えばマーケティングは幸せ度が高めに。背景にある仕事と幸福の奇妙な関係に迫る。
「幸せの逆が不幸せ」では必ずしもない
ただ、本調査の特色は「幸せの逆が不幸せ」と単純化しなかった点にある。「幸せ度も不幸せ度も高い」や、逆に「あまり幸せでも不幸でもない」職種や業種もあり得ることになる。井上さんによると、上記のオペレーション色の強い職種であっても、「リフレッシュ」(ほっと一息つける)」や「役割認識(仕事を自分事と見なせる)」といった幸せ度の因子は高めの傾向となった。
他にも、専門性の高い職種は「自己裁量(マイペースでできるか)」や「他者貢献(誰かのために働ける)」といった幸せ因子が高い一方、不幸せの因子を見ると「オーバーワーク」気味になる傾向も明らかに。井上さんは「オーバーワークを回避してリフレッシュを求める人は『生産・管理・製造』の方がきっと向いている。仕事における“幸せ”の形は多様で、それが得られやすい所に行くべき」と指摘する。
さらに、ちょっと意外な結果となったのが「正社員よりフリーランス・自営業の方が働く幸せ実感が高い」という傾向だ。
あくまで、多くの自営業者にとって苦境となりつつあるコロナ禍直前の調査ではあるものの、井上さんは「『仕事のやりがいを得たいがためのフリーランスだ』というマインドセットが、そもそも彼らにはあるのでは。サラリーマンだったら見過ごしてしまうことにも、幸せを感じられるのかもしれない」と分析する。
同じく調査を担当した慶應大の前野教授も「〇〇業の人が不幸せ、といった情報が独り歩きしないでほしい」とくぎを刺したこの「幸福学」の調査。井上さんは「新卒よりも、ある程度就労を経験した人にとっての“棚卸し”として活用してほしい」と指摘する。例えば「自分が仕事に求めているのは自己成長だが、今得られていられないから幸せでない」といったイメージだ。
さらに井上さんは「特に(調査結果で重要視された)クリエイティビティ―を従業員に与えない会社は、優秀な人材に選ばれなくなってくるのではないか」と指摘する。「従来の日本企業はオペレーション優先で、末端の社員に創造性はそれほど必要なく、黙々と作業をこなしてくれればよかった。しかし今は創造性を開花させ、“幸せ”を与えてくれる会社でなければ伸びないし、人材も来ない」(井上さん)。
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