トヨタの大人気ない新兵器 ヤリスクロス:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
ついこの間、ハリアーを1カ月で4万5000台も売り、RAV4も好調。PHVモデルに至っては受注中止になるほどのトヨタが、またもやSUVの売れ筋をぶっ放して来た。
7月22日、トヨタが新型車、ヤリスクロスのプロトタイプに乗らないかというので、袖ヶ浦フォレストレースウェイまで出かけてきた。
コロナ以降、筆者を試乗会に呼ぶのがトヨタだけなので、この連載がすっかりトヨタ祭りになっているが、先日ようやく他に2社ほど試乗会の案内が入った。他社も試乗会を始めてくれてちょっとホッとしている。
さて、またもや期待のニューモデル。ついこの間、ハリアーを1カ月で4万5000台も売り、RAV4も好調。PHVモデルに至っては受注中止になるほどのトヨタが、またもやSUVの売れ筋をぶっ放して来た。多分競合他社は「殺す気か!」と思っていることだろう。
ファミリー開発
名前からも明らかなように、ヤリスクロスはヤリスのコンポーネンツを使ったSUVだ。というのが従来型の説明なのだが、それは少し不正確で、トヨタはGA-Bプラットフォームの企画の最初から、ヤリスクロスを織り込んでいる。
具体的にはどういうことかといえば、チーフエンジニアはこう説明している。「Bプラットフォームを使うクルマは、全部ファミリー開発をしています。ヤリスとヤリスクロスに関しては、最初から同時開発で、同じメンバーで、パワートレーンもプラットフォームも2台の両立解を見つけるべく作ってきました。ヤリスクロスの方が110キロ重く、重心も高いので、一般的には条件が厳しいわけです。ただ、トレッドが広い分良くなっている部分もあります。全体としてはヤリスの方が余裕があると思いますね」
ハリアーもそうだったが、ここのところトヨタは、同じコンポーネンツを使うクルマを1つのチームで開発するやり方にシフトしつつある。このメリットは、コンセプト段階で作り込んだクルマの性格をしっかり作り分けられるところだ。あらかじめ策定した商品ポートフォリオがぶれなくなる。
2人の棟梁(とうりょう)が手柄を競うと、そうはならない。お互いの真ん中にあるお客を両側から取りに行けば共食いになってしまう。あるいは本当は同じ部品でもやれるところを相手を出し抜くために専用部品化するとか、そういうことでコストが上がり、本当の意味で顧客中心なのかどうかが曖昧になってくる。競争には良い面もあるが悪い面もある。そこのバランスをうまく取りながら、車両群をワンチームで開発するやり方をトヨタは始めた。これは新しい取り組みだ。
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