1人1日1万5000円 大盤振る舞いの「雇用調整助成金」を活用しない企業のホンネ:休業手当の一部を助成(2/4 ページ)
新型コロナの影響拡大で「雇用調整助成金」が注目されている。申請方法が簡素化されたり、受給額が拡充されたりしているが活用が進んでいない。その根本的な理由とは。
申請要件を緩和したのに……
この雇用調整助成金ですが、2020年9月30日までは新型コロナ対策ということで、申請の方法が簡素化されたり、受給額が拡充されたりしています。受給額にして、1人当たり1日最大1万5000円(拡充前は失業手当の日額の上限に合わせて8330円)となっています。さらには、事業主の負担を軽減するために、申請要件も緩和されています。主な緩和策としては、以下のようなものがあります。
・休業等計画届の事後提出が可能
通常、助成対象となる休業などを行うにあたり、事前に計画届の提出が必要です。しかし、中国湖北省への渡航中止勧告が出された20年1月24日を新型コロナウィルスの流行の開始と考え、その日以降に初回の休業等がある計画届については、同年9月30日までに提出すれば、休業等の前に提出されたものとみなされます。
・生産指標の確認対象期間を3カ月から1カ月に短縮(緊急対応期間に適用)
最近1カ月の販売量、売上高などの事業活動を示す指標(生産指標)が、前年同期に比べ5%以上減少していれば、生産指標の要件を満たします(1年前に会社として雇用保険に加入していなければ、19年12月と比較)。できる限り多くの事業者に受給できるように、売り上げの減少のハードルは低く設定されています。
さらに、前々年同月比、または書類をハローワークに提出した月の前々月からさかのぼった任意の1カ月との比較も可能となっています。
・最近3カ月の雇用指標が対前年比で増加していても助成対象
通常、雇用保険被保険者及び受け入れている派遣労働者の雇用量を示す雇用指標の最近3カ月の平均値が、前年同期比で一定程度増加している場合は助成対象となりませんが、その要件が撤廃されます。
・事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象
・雇用保険に加入していないパート・アルバイトなど非正規労働者も対象(業務委託は対象外
・雇用期間にかかわらず、受給可能
・従業員がおおむね20名以下の事業者については、平均賃金の代わりに実際に支払った休業手当の額を用いて、助成額を算定することが可能
このように、需給額の増加、申請要件の緩和など、新型コロナの影響を受けている会社の負担を少しでも軽くするため、とにかく利用しやすい制度にしようと工夫が凝らされてきました。また、申請すれば1カ月程度で振り込まれるといったように、ハローワークも総力を結集して審査業務にあたっている雇用調整助成金ですが、なぜ思ったよりも申請件数が伸びないのでしょうか?
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