なぜフィンランド人は夏に1カ月休んで、1日数杯のコーヒーを飲むのか:「持続可能な」働き方(2/5 ページ)
多くのフィンランド人は夏に1カ月休み、1日に数回のコーヒー休憩をとるという。日本人からすると「そんなに休んでも大丈夫なのか」と思ってしまうが、現地の人たちはどのように働いているのか。話を聞いてみると……。
思いきって休まなければ休暇の意味がない
フィンランドの首都ヘルシンキは、観光客にも人気の都市であり、週末になると多くの人でにぎわう。にもかかわらず、土日は多くの店が時短営業、または閉店する。
現地に長く住む人に尋ねたところ、土日祝日に働くスタッフには、かなり割増で給料を支払わなければならない事情があり、支出以上の売り上げが立たない店は休まざるを得ないのだという。これもまた、働きすぎないための政府の方針なのだろう。
フィンランドで生まれ、弁護士としての職務経験を経て、28歳のときに共同創業者2人と一緒に、北欧コーヒーを販売するスタートアップ「SLURP」を立ち上げたマヌエル氏。日本の焙煎家は世界的にもレベルが高いということから、日本向けにもコーヒーのサブスクリプションサービスを提供しており、日本人社員も在籍する。
同社では、熱量高く仕事に取り組む一方で、フィンランドに根付く休暇文化も大切にしているとのこと。
「フィンランドの年間休暇日数は、世界でもっとも長い6週間です。週休2日の休日と祝日以外にこの6週間の休暇が保証されています。仕事内容や個人のポリシーによってフルに休まない人もいますが、当社では極力6週間休めるように配慮しています」(マヌエル氏)
多くのフィンランド人は、そのうち3〜4週間を夏休みに当てるという。では、1カ月もの休暇の間、彼らはどのように過ごしているのだろうか。
「夏休みは所有している国内のサマーコテージに滞在して、大自然の中でリラックスして過ごしたり、アクティブに海外旅行に行ったりする人が多いですね。サマーコテージは湖の隣にあるのが一般的で、サウナに入ったあと湖に飛び込み、その後はコーヒーやお酒を飲みながら、ゆったりと流れる時間を楽しみます」(マヌエル氏)
「フィンランドでは『休暇は完全なフリータイムであるべき』という考え方が浸透しているため、休暇中は一切仕事をしません。普段は没頭して働くからこそ、思いきった休みが必要なんです。実際に長期休みを取ったあとは、全身にエネルギーがみなぎるような感覚があります」(マヌエル氏)
長期休暇中は仕事を忘れるために、環境や過ごし方をガラッと切り替える。それがフィンランド人が考える休暇の哲学のようだ。
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