なぜフィンランド人は夏に1カ月休んで、1日数杯のコーヒーを飲むのか:「持続可能な」働き方(4/5 ページ)
多くのフィンランド人は夏に1カ月休み、1日に数回のコーヒー休憩をとるという。日本人からすると「そんなに休んでも大丈夫なのか」と思ってしまうが、現地の人たちはどのように働いているのか。話を聞いてみると……。
仕事中のコーヒー休憩は「単なる息抜き」ではない
14年に創業したSLURPでは、現在約25人の社員が在籍しており、平均年齢は30歳。若手メンバーが中心となり、やる気に満ちあふれた雰囲気のなかで仕事に打ち込んでいるという。
同社で仕事をすることと同じくらい重要視しているのが、仕事の合間に取る10〜15分ほどの「コーヒー休憩」だ。これはSLURPに限ったことではなく、フィンランドの多くの企業が、労働者の権利としてコーヒー休憩の取得を推奨している。
「一般的な企業では、午前中に1回、ランチ後に1回、午後に1回ほどのペースでコーヒー休憩を取ります。ランチ後のコーヒー休憩は、昼寝を意味するナップとカプチーノを組み合わせて『ナプチーノ』と呼ばれることも。ランチの後にコーヒーを飲んで昼寝をすると、15分後ぐらいにカフェインが効いてきてスッキリ目覚められるんです。当社でもコーヒー休憩+昼寝の制度を取り入れています」(マヌエル氏)
SLURPでは、コーヒー好きのメンバーが集まっていることから休憩の頻度が多く、1時間に1回のコーヒー休憩を取ることも日常茶飯事だとか。
「誰からともなく『コーヒー飲まない?』という声かけがあり、みなでソファに座って15分ほど雑談しながら休憩をします。当社の場合は、仕事の延長線上としてみんなで新しいロースタリーのコーヒーの感想を言い合ったりもしますが、頭を使って集中する作業から開放されて、良いメリハリになっていますね」(マヌエル氏)
社員が仕事に没頭しているときでも、自ら声をかけ休憩を促すというマヌエル氏。また、コロナ禍でリモートワークをすることも多いが、そんなときはオンラインで一緒にコーヒー休憩を取ったり、外に出て散歩をしたり、気分を切り替えるタイミングを大事にするそうだ。
「効率的に仕事をしたいと考えるなら、良いツールを使うことと同じくらい、自分の体や脳を休ませることも必要です。十分なエナジーがなければ、良いツールをうまく使いこなせないからです」(マヌエル氏)
国民1人当たりのコーヒー消費量が世界でもっとも多く、生活のなかにコーヒーが浸透しているフィンランド。ここではコーヒー休憩は単なる息抜きではなく、仕事を効率的に進めるために必要不可欠な文化なのだ。
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