見通しが甘かった大戸屋、買収どころではないコロワイド 「大戸屋紛争2.0」を読み解く:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
コロワイドが大戸屋に“超攻撃的買収”を仕掛けている。敵対的な買収はそもそも成功するのか。買収された後、大戸屋にはどんな運命が待ち受けているのか。
コロワイドによる大戸屋ホールディングスへの敵対的買収が話題になっている。
現在、コロワイドは大戸屋株の約19%を保有する筆頭株主。2019年10月に大戸屋創業家からほぼ全株を約30億円で取得した。筆頭株主ながら、コロワイドの改善提案を大戸屋が聞き入れないので、同意を得ない敵対的なTOB(株式公開買い付け)に発展した。
外食業界はオーナー同士が全般に仲が良く、話し合いの中で友好的にM&Aが決まっている。しぶしぶ買われる場合には、投資ファンドが絡むケースが多い。買収を仕掛ける会社が、相手の会社が心の底から嫌がっているにもかかわらず、金の力で強引に我が物にするような話は聞いたことがなく、極めて異例である。
つまり、コロワイドも相次ぐM&Aで外食業界4位の年商約2350億円規模まで登り詰めているが、今回のような超攻撃的買収は初めてだ。
大戸屋は、池袋の大衆食堂からグローバルチェーンに成長させた、先代社長・三森久実氏が15年に急逝して以来、現経営陣と創業家が跡目争いでもめていた。跡目を継げず会社を去った創業家長男の智仁氏が、現経営陣に「倍返し」の仕打ちに出た、「大戸屋紛争2.0」でもあるのだ。
イデオロギーが日々注入されることに
大戸屋側から見れば、あたかも力任せにねじ伏せられるような、非常に屈辱的な会社乗っ取りである。大戸屋は年商250億円を切るくらいの企業で、コロワイドのざっと10分の1ほどの規模だ。
買収成立後は、こだわり抜いてきた店内調理を否定され、工場生産のセントラルキッチン方式を強要される。本社も横浜のランドマークタワーに移転され、事務系社員は他のコロワイド社員と共に「同じ釜の飯を食う」ことで、コロワイドのイデオロギーが日々注入される。
ところが、創業家から見れば、逆に会社を乗っ取られたのは自分たちであり、コロワイドは憎き大戸屋を正す救世主になる。「義は我にあり」だ。コロワイドは創業家の怨念(おんねん)が憑依(ひょうい)したがごとき鬼の形相で、大戸屋の経営陣刷新を求めているように見える。コロワイドは智仁氏を社外取締役として新経営陣リストに入れているが、施されたら施し返す「恩返し」の側面がある。
泥仕合となった買収劇の行方はどうなるか。背景から見ていきたい。
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