見通しが甘かった大戸屋、買収どころではないコロワイド 「大戸屋紛争2.0」を読み解く:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
コロワイドが大戸屋に“超攻撃的買収”を仕掛けている。敵対的な買収はそもそも成功するのか。買収された後、大戸屋にはどんな運命が待ち受けているのか。
社員を平然と「馬鹿」「アホ共」と呼ぶ
コロワイドと大戸屋の直近の業績はどうなっているのだろうか。
コロワイドは、焼肉「牛角」、回転寿司「かっぱ寿司」、しゃぶしゃぶ「温野菜」、居酒屋「甘太郎」など多彩なブランドを持つが、20年3月期の連結決算で最終損失64億円を計上しており、過去最大の赤字となっている。業績がパッとしない会社だ。
16年3月期の年商は2340億円で、同年12月にフレッシュネスバーガーを展開するフレッシュネスを買収するなどの動きがあったものの、5年間ほぼ横ばいである。M&Aでぐんぐん伸びていたのは5年ほど前までの話で、現状は停滞している。
14年にかっぱ寿司を展開するカッパ・クリエイトを買収したが、立て直しに苦慮。それからカッパは4人も社長が交代した。河童の看板をお皿が重なっているデザインに変えたり、食べ放題を導入したり、売りである特急レーンをやめてみたり、散々いじくり回した挙句、残念ながら回転寿司3強の「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」との差は開く一方なのである。
18年に就任した現社長の小澤俊治氏が既存店の売り上げをプラスに持ってきたが、コロナ禍で落ち込み、復活途上にある。カッパの20年3月期の年商は約748億円で、16年の約803億円から減少している。やっと不採算店を整理して、顧客離れを食い止めた段階だ。
かっぱ寿司は効率優先のチェーンで、セントラルキッチン方式のコロワイドとの相性が良さそうなのに苦戦している。
かっぱ寿司が低迷する中、17年にはコロワイドの蔵人金男会長執筆による、仰天の社内報がSNSに投稿され、大きな話題になった。全般には経営哲学を述べた内容ではあったが、驚いたのは社員を平然と「馬鹿」「アホ共」と呼ぶ、独特の言い回しである。
また、その社内報では、牛角の運営会社レインズインターナショナルの社員が、買収されて5年も経過しているのに蔵人氏にまともにあいさつもしない実態が明らかにされ、「私が嫌いで、嫌悪感すら感じるのだろう」「今更、その程度に私に逆らっても始まらない。所詮(しょせん)、コロワイドが買収した会社」とまで書いてあったのだ。
レインズは、コロワイドの業績を支えている会社。足を引っ張ってきたかっぱ寿司とは違う。そのレインズの社員を、同じランドマークタワーで5年も机を並べながら、経営者は人心掌握ができているのかと疑ってしまう。
大戸屋の今後の運命を暗示するようではないか。
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