リモートワークに適応できないマネジャーが見直すべき、マネジメントの本質:社員研修のプロが語る(2/3 ページ)
リモートワークが当たり前になる中で、筆者は「この状況にいち早く適応しようとしているのは若い世代の人たちで、むしろもっと意識改革をしなければいけないのは経営者、マネジメントの層だな」と感じていた。マネジャーがいま、見直すべきマネジメントの本質とは。
例えば、出社して働いた時間で社員を評価してきた会社は、リモートワークでも「部下が何時間働いているのか」を把握しようと躍起になります。パソコンのモニターを録画したり、マウスの稼働時間を記録したり、という話を真剣に議論するのです。
終いには「このようなシステムはコストが甚大だ。だからうちではリモートワークはできない」と結論付けてしまう会社もあるのです。新しいことをやろうとしているのに、これまでと同じ枠に当てはめて考えているから、うまくいかないのではないかと、もどかしく感じてしまいます。
手段と目的を混同しない
マネジメントに限った話ではありませんが、こうした方々は手段と目的を混同してしまうことがよくあります。
例えば「部下を叱る」という行為。本来は、部下が何か良くない言動を取った際に、それを繰り返さないようにするための行為です。反対に「褒める」という行為は、良い行動を繰り返し行うようにさせるための行為です。しかし叱るにしても褒めるにしてもその行為自体が目的化してしまい、叱るためのポイント、褒めるためのポイントを探しにいこうとする人を、とても多く見ます。
先の時間管理についての例も同じです。いつの間にか「社員が働いた時間を把握すること」が目的となっていますが、本来は実績が数値化できない社員の、仕事に対する貢献度合いを測るための一つの指標として「時間」があったにすぎません。
環境が大きく変わったにもかかわらず、自分たちを変えようとせず、自分たちが今できる範囲でしか動こうとしないのは、少し傲慢(ごうまん)であるようにも感じますし、会社の可能性をつぶす行為にもなりかねません。
マネジメントにおける「不易」はただ一つ
不易流行という言葉はご存じでしょうか。いつまでも変わらない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものも取り入れていくという考え方です。私も含め多くの人は、過去の時点での流行を、いつのまにか不易だと勘違いしてしまっていることがあります。
私が考えるマネジメントにおける不易はただ一つ。「部下の可能性をとことん信じること」です。いつだって、部下は上司が考えるよりもはるかに優秀です。
「俺が見ていないとあいつは仕事をしない」
「私がいないと、まだ一人では立たせられない」
上司がそう思っているうちは、部下は絶対に大きく成長することはできません。これはリモートワークでも、在宅ワークでも、出社して同じ職場で働く場合でも変わりません。
それ以外のことは、時代や環境が変わる中で、どんどん柔軟に変えていけば良いと思います。
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