NHKを辞めてユーチューバ―に。起業は「縛られない自由な生き方」なのか:耐えられない(4/4 ページ)
誰もがうらやむ難関企業に就職しても、3年経たずに辞めてしまう学生がいる。こうした選択をどのように考えればいいのか。
「雇われない選択」の実態
私が会社員を辞め、自分の会社を作ったのは40代半ばでした。会社のしがらみや組織のあつれきなど、普通の会社員並みに嫌というほど味わい、自分なりの戦いもし、転職もしてきました。起業において成功は夢見ましたが、大成功する確信は当然なく、事実何度か存亡の危機を迎えました。
何より会社という「器」のありがたみは、すべてを自分でやらなければならない起業によって十二分に理解できました。雑用するために起業した訳ではありません。しかし事務所のゴミは自分が捨てなければ誰も片づけてはくれません。社会保険など専門知識はまるでなく、法人設立だけでなく設立した後もさまざまな手続きを労働局や法務局、税務署相手にしなければなりません。
何より芸能人でも有名人でもない私は、すべて自分で営業しなければ売り上げが立ちません。「自分から営業しないで大成功」という起業ストーリーをよく見かけますが、営業は新規開拓だけでなく、クロージングから回収、入金されるまで完結しません。スタッフやシステム投資ができるならもっと楽なのでしょうが、「雇われない選択」とは、雑用含め全部を自分でやるという選択です。
ちなみに多額のシステム投資をしようが、自前で手間をかけようが、それらの仕事は1円の利益も生まず、ただ開業資金が出ていくだけです。売り上げ・利益として回収されるには、営業が成功し、恐らく半年以上先に売上金が入金される時です。半年以上、売り上げ・利益ゼロで日々の生活と会社運営をしなければならないのです。
それでも最後は自らの決断
こうした苦労程度、起業を考える人は誰でも理解しているのだろうと思います。だから起業するなというつもりは全くありません。ただ会社員生活をきわめて短期間しかしていない人が起業するのは、かなりのリスクだということを理解し、それを上回る利益回収が見込めるなら、どしどし起業していくべきだと思います。
「コロナを正しく恐れよう」といわれますが、リスクはゼロにできません。正しくリスクと付き合える人は、きっと起業でも大きな失敗をせずに済むのではないでしょうか。(増沢 隆太)
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