リップルの挑戦で送金手数料ゼロは実現するか? 世界でも国際送金手数料の高い国、日本(4/4 ページ)
海外への送金、いわゆる国際送金については日本は世界でも特にコストが高い国といわれている。徐々に送金コストは下がってきたものの、それでも銀行経由の場合、平均で11%ものコストがかかっている。主要国で日本よりもコストが高いのは南アフリカだけだ。こうした高コスト、非効率な国際送金の仕組みを変えようとしているのが、米国のテクノロジー企業リップルだ。
動きの鈍い日本の金融業界
国内における送金手数料の高さの問題は、銀行間の送金の仕組みである全銀ネットに起因する。現在、次世代の全銀ネットの開発に向けて議論されているが、これが稼働するのは2027年の見込みだ。しかも、全銀ネットが新しくなっても国際送金における課題は残されたままになる。
ではなぜ国内の金融機関は、リップルのようなブロックチェーンを使った送金システムに及び腰なのか。「国内の金融機関は銀行オープンAPIを進める動きがあって、過去2〜3年はそれに向けて基幹システムをオープン化することにIT開発予算が割かれてきた。また、アンチマネーロンダリングを規制する国際機関FATFが日本に厳しい目を向けたこともあり、検査が厳しい状況の中で金融機関もあまり新しいことを始められなかった」と吉川氏は指摘する。
これらが一段落ついた今、金融機関も次のステップに進めるようになったという見立てだ。リップルも「今のところが動きが早くて、新しい技術を貪欲に取り込んでいこうとしている資金移動業者にフォーカスしているが、ゆくゆくは銀行への導入を目指す」としている。
国際送金にXRPなどの暗号資産を使うのは、規制面もクリアしなくてはならない。例えば中国やインドでは金融機関が暗号資産を持つことを禁じているからだ。一方で、国内においては結果的に暗号資産の法的な位置づけが明確だ。金融機関が暗号資産を持つことも禁止されていない。
にもかかわらず、「保守的な金融機関は、暗号資産といわれると及び腰になるところもある」(吉川氏)のは、日本の金融機関で革新がなかなか進まない要因の1つなのだろう。
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