「他と違った行動を認めない」「テレワークで細かく監視したがる」上司が、企業のイノベーションを阻害している:アフターコロナ 仕事はこう変わる(3/5 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴いテレワーク化が進められている。一方で、「相変わらず、対面の社内ミーティングが必須」といった企業も少なくない。こうした現状について、『職場の問題地図』などの著書で知られる業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまね氏は、「日本型マネジメントの根底には、“幼稚性”がある」と指摘。インタビューで真意を聞いた。
報連相型のコミュニケーションを捨て、「雑相」を促す
――次に、オープン型の特徴について教えてください。
オープン型は、トップダウンではなくフラットなつながりを重視します。オープンな情報共有によって、互いの違いを殺すのではなく、むしろ認め合い、生かします。従来はよしとされてこなかった、仕事とは直接関係しない雑談も、オープン型では重要になってきます。
こうしたマネジメントが今の時代にふさわしいと考えるのは、かつてのように「上の人が答えをもっている」という前提が崩れているからです。上司よりも数段優れたアイデアを、部下が思い付くことも十分にあり得ます。あるいは社外の専門家が答えを持っているかもしれない。オープンにコミュニケーションを取ったほうが、早く正しい答えに近づけると思います。
――具体的には、どのような雑談が効果的なのでしょうか。
「雑談と相談」「雑な相談」という2つの意味を含んだ、「雑相」という造語で説明したいと思います。これは、全社員リモートワークを実践しているソニックガーデンの倉貫義人社長が提唱している言葉です。
まず、「雑談と相談」というのは、雑談が相談さらには問題解決や新たなアイデアの創発につながるようなコミュニケーションです。メールサービスのGmailがGoogle社の社員の雑談から生まれたという話もありますが、雑談が問題解決やイノベーションにつながるケースは少なくありません。
次に、「雑な相談」というのは、生煮えのアイデアでも、相談の土台に上げてしまう、ということです。
――「相談」というと、きちんと中身を詰めてから行うイメージがあります。
そうですよね。報連相がコミュニケーションの主体となる統制型(ピラミッド型)の組織では、それが常識です。しっかりとアイデアを練り、企画を資料に落とし込んで、はじめて上司に持っていけるという感じです。
でも、今はどこにヒントがあるか分からない時代であり、スピードが何よりも求められます。きっちりと内容を詰めるよりも先に、情報共有することが大切です。
カジュアルな「雑相」を活発にするには、社内のITインフラも重要です。社員同士がコミュニケーションしやすいカフェスペースを設けたり、Slackのようなビジネスチャットツールを導入したりする。固定席と会議室だけでは、なかなか雑相はうまれにくいですよね。雑相が起こりやすい「場」の提供も大事なのです。
「社内のコミュニケーションはメールで十分」と思われるかもしれませんが、メールは手紙をデジタルに置き換えたもので、「わざわざ感」も働き、気軽な受発信には向いていません。わざわざ「○○様」とか「お世話になっております」とか書くのも面倒ですよね。「わざわざメールで伝えるほどのことではない」。この心理が、ちょっとした気付きの共有や、雑相を妨げます。その点、ビジネスチャットツールは形式にとらわれずに発信できるので、オープン型のカルチャーに合っています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.