オンラインで行う会社説明会の上手な進め方:人・お金の余裕がなくてもOK(4/4 ページ)
新型コロナウイルス感染症の影響により、採用市場ではオンラインでの会社説明会が広がっています。中小企業がオンライン説明会を導入・運用する際のポイントを解説します。
(3)話すスピードを速くする
Web説明会を行ううえでさらに注意するとよいのは、「話すスピード」です。オンラインでは、話すスピードが「速い」ほうが、その動画をきちんと見ることが分かっています。
話すスピードが速いと、動機形成の効果も得られます。ある研究によれば、オンラインコミュニケーションにおいては、発話速度と社会的魅力が相関することが分かっています。すなわち、速く話す人に対して「この人は魅力的だ」と感じやすいのです。
元より、対面の状況でも、話すスピードが速いと快活で聡明かつ友好的だと思ってもらいやすいところがあります。Web説明会を実施する際には、対面説明会よりも意識的に速く話すことを心掛けましょう。
(4)Web説明会用のコンテンツを準備する
新型コロナウイルス感染症が一時的に収束するなかで、対面説明会を部分的に開催する企業もあるようです。なかには、対面説明会の様子を録画し、その動画をWeb説明会として配信すれば一石二鳥だと考える企業もあるでしょう。しかし、オンラインでの視聴を前提にコンテンツをつくったほうが、求職者にきちんと視聴してもらえることが分かっています。
対面状況では参加者の顔を見ながら、柔軟に話を組み立てています。資料の順番を変えたり、「いま後ろに座っている人がまさにそうですが」などと、その場にいないと意味の分からない発言が飛び出したりします。こうした対面に特有の発言は、オンライン視聴者の集中力を阻害してしまいます。Web説明会用のコンテンツを準備するようにしましょう。
(5)Web説明会以外でも情報提供する
オンラインで物事を学ぶとき、学習者の事前知識の状態が重要であることが指摘されています。内容についてあらかじめ知識を持っている人のほうが、多くの学びを得やすいのです。
この点は、事前に求職者に知られていない企業にとって、深刻な課題を生み出します。その企業のことを知らないままWeb説明会を受けると、求職者の理解が進みにくいからです。
対策としては、例えば、事前に採用サイトを読んでからWeb説明会を受けるように促す方法が考えられます。あるいは説明会後に、さらに自社のことを知るために読むべきコンテンツを案内するのも一策です。
(6)求職者が価値を感じるコンテンツにする
オンラインでは、視聴者が「価値」を感じるコンテンツのほうが学びが深くなります。
ここでいう価値とは、「面白い」「重要だ」などと感じてもらえることを指します。Web説明会の文脈でいうと、求職者にとって意味のある内容でなければ、求職者は真剣に話を聞かないということです。
会社説明会となると、自社の説明を行うことに企業側の関心は集まりがちですが、例えば就職活動に役立つ知識や、将来働くうえで大事になる心構えなど、求職者が欲しがる情報もあわせてWeb説明会で提供する必要があるでしょう。
求められる求職者への支援
ここまでWeb説明会について主に企業側の立場から述べてきましたが、求職者側もWeb説明会という慣れない形式に戸惑っていることを忘れてはなりません。
オンラインでの学びを促す主な要因として、「自己効力感」が挙げられます。自己効力感とは「自分はオンラインでうまく学べる」という自信のことです。自信がないと学びも妨げられるのです。
Web説明会を通じて求職者が豊かな学びを得ることは、企業にとっても求職者にとっても重要事項です。例えばWeb説明会の冒頭に、「本日は3点だけ知っていただければ大丈夫です」など学習目標を示すと、求職者も「なんとかなりそうだ」と思ってくれるでしょう。
さらに進んで、「Web説明会の聞き方講座」といったコンテンツを求職者に提供するのもよいでしょう。いずれにしても、よりよいWeb説明会を行うために、求職者を支援する姿勢が求められることは間違いありません。
著者紹介:伊達洋駆
株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
一般社団法人日本採用力検定協会理事。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。人事領域を中心にリサーチ事業を展開。
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