オフィスのソーシャルディスタンスを確保するには? ウィズコロナで活用進むHR Tech:社員の健康管理も(3/4 ページ)
ウィズコロナの世界、人事の領域ではいわゆるHR Techへの期待が高まっている。ソーシャルディスタンスの実現、社員の健康管理など、HR Techの導入はどのような効果をもたらすのか。
実は米国企業を中心に、今回のパンデミック以前から、デジタル技術で従業員の健康管理に取り組む企業が増えていた。その狙いは、企業が従業員のために支払う医療保険コストの抑制である。日本のような国民皆保険制度のない米国では、企業に勤める人の場合、その企業が福利厚生の一環として提供する医療保険を利用することが一般的だ。そうした医療保険のコストが企業にとって大きな負担となっており、企業は従業員を健康に保つため、さまざまなテクノロジーの助けを借りるようになっている。
例えばヴァージン・グループ傘下のヴァージン・パルス社は、契約企業の従業員に対し、スマートフォンアプリやウェアラブルデバイスを提供。自身の健康状態や生活状況に関する情報を入力してもらったり、センサーによる活動データの収集を行ったりして、各種情報を蓄積する。これらを分析することで、従業員の心身の健康状態を把握するとともに、トレーニングなどのさまざまな健康増進プログラムを提示している。
こうした企業による従業員向けの健康増進活動は「コーポレートウェルネスプログラム」と呼ばれ、ヴァージン・パルスの他にも複数の有力プレーヤーが登場している。
ウィズコロナの世界では、デジタル技術による従業員の健康管理のニーズがさらに高まると予測されている。従業員の健康状態をリアルタイムに近い形で把握することで、例えば発熱などの症状が出ている従業員の出社を、事前にやめさせる(エントランスに設置したサーモグラフィーで発熱を把握するような水際対策で満足するのではなく)といった対応が可能になるためだ。
また新型コロナウイルスに関しては、まだ不明確な部分が多い一方で、感染や重症化のリスクが高い人物の属性や生活パターンが明らかになりつつある。コロナ対策だけに限らないが、感染リスクの高い従業員(過労状態で免疫力が下がってる可能性があるなど)に対しては、出社を禁止したり休暇取得を勧めたりといった対応が取れるだろう。そうした判断を可能にするツールとして、健康管理系のアプリケーションが企業に浸透していく可能性がある。
プライバシーをめぐる議論
その一方、これらの管理ツールに対しては、知られたくない(知らせる必要のない)個人情報まで会社に知られてしまうのではないかという懸念が示されている。またそうした情報を雇用主に提供するのがやむを得ないとしても、恣意的な運用がなされないか(不当な理由で解雇する際の言い訳として、健康上のささいな問題が強調されるなど)という不安の声もある。
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