菅新首相と投資の話題:KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)
現時点で最大の話題は「いつ総選挙を行うか」だろう。菅首相は自民党総裁を安倍前首相から9月に引き継いだが、2021年9月にいったん総裁の任期を迎える。菅首相は、その時期までにもっとも良いタイミングで解散・総選挙を行い、総裁・首相としての政治基盤を固めようとするだろう。
現時点で最大の話題は「いつ総選挙を行うか」だろう。菅首相は自民党総裁を安倍前首相から9月に引き継いだが、2021年9月にいったん総裁の任期を迎える。菅首相は、その時期までにもっとも良いタイミングで解散・総選挙を行い、総裁・首相としての政治基盤を固めようとするだろう。
例えば、最大野党の立憲民主党は再編を終えたばかりで選挙準備に時間がかかるとみれば、与党に有利な年内の解散・総選挙もあり得る。いわゆる解散の「大儀」は、「GO TOキャンペーン」政策による旅行・外食等の経済活動拡大の是非を問うなどの可能性が高い。
株式市場の観点で見ると、現与党が選挙で勝利することは、一般に好材料となる。特に圧勝となれば、首相のリーダーシップ強化と受け止められ、必要な政策実行が容易となり、改革などが一気に進むと期待される。
デジタル化と行革は株式市場としては遠い
菅首相の唱える政策の中では、デジタル化と行政改革はあまり株式市場の材料にならないとみている。デジタル化は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の流行や、インターネット、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、5Gなどと関連するように思えるが、現実はそうではなく、きわめて遅れた稚拙な政府部門のシステムの見直しを意味する。
支援金給付の受付がインターネット経由で処理できないケースが多かったり、新型コロナウイルス陽性者数などの集計がアナログ(手作業)で行われた、といった問題を解決するために、各省庁間のみならず、政府と地方自治体が一体化した取り組みが必要であり、デジタル庁の創設に期待がかかる。
だが、「庁」として半永久的に取り組まねばならないほどこの問題は複雑だ。これまで各省庁は、個別のニーズに基づき、それぞれの都合をもとにコストを最小化するようにシステムを構築してきた。データ共有が合理的であっても(接続しようとするとしても)総合的にシステム設計をするという発想は少なかったように見える。
同じ国民を相手にしながらも、それぞれの都合で番号をつけ、共通化に踏み切れなかった。これは、プライバシーなどの観点から政府が統合的な情報を持つことを嫌う考えが国民に強かったことや、社会保障番号を国民につけることを所得の捕捉を嫌う人々に配慮したことなど、政治的な背景もあると考えられる。マイナポイントを使ってマイナンバーカードを普及させ、年金や健康保険などからデータを統合していくことにようやく着手した政府のデジタル化は、システム開発というよりも、政治判断に問題があるといえる。
さらに地方自治体はそれぞれの財政規模などに応じてシステム開発を行ってきたと考えられ、現場の作業を楽にするようなシステム統合は難しく、新しい企画に皆が合わせていくような改革が必要となる。調整と導入には時間がかかり、システムを受注する企業の利益率も高くないだろう。それゆえ、政府・自治体のデジタル化が株価に影響するとしてもごく一部となり、セクター選択に影響を与えるとは考えにくい。
行政改革は過去にさまざまな政権で行われてきたが、株式市場に影響を与えることはあまりなかった。国鉄や電電公社、郵便事業の民営化など大型の案件がある場合、行政改革と市場での資金移動が同時進行することもあったが、河野行革大臣のターゲットが「縦割り打破」であることから分かるように、デジタル庁と同様の問題をデジタル化以外の点で推進する、と考える方が分かりやすい。経済再開と医療体制拡充など「縦割り打破」の重要課題はあると考えるが、いまのところ、株式市場が注目すべき材料が多いとは考えていない。
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