コロナ禍で産業構造は変化しているのか:KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)
産業構造変化の観点からみると、経済と主要株価指数は以前から乖離しており、今回のコロナ・ショックで偶然に加速した。数年かかると思われた変化が、コロナ・ショックをきっかけに一気に進んだ面はあるが、ショック自体が業種別比率の変化の方向を変えたのではない。
株価指数の業種別時価総額比率(以下、業種別比率)の変化で、産業構造変化の「期待」を読み解くことができる。日本の90年初頭からのバブル崩壊後、金融の業種別比率が低下した。事実、銀行の数が大幅に減少したことから、後から実体がついていったようにみえる。
米国のITバブルをみると、通信やインターネット関連の株価が大幅に上昇したのだが、利益が期待についていくことなく崩壊し、時価総額が示すほど産業構造の変化は大きくなかった。しかし、米国におけるリーマン・ショックの時は、金融の業種別比率が低下し、後から実体がついていった。
一方、今回のコロナ・ショックの場合、米国をみると、GAFAを代表とするインターネット関連(特にプラットフォーマー)の株式時価総額比率の上昇がみられた。これはショックが原因になったとは言えないが、重要度がこれまで以上に高まったといえる。
コロナ・ショックで経済と株価は乖離したのか
前述した産業構造変化の観点からみると、経済と主要株価指数は以前から乖離しており、今回のコロナ・ショックで偶然に加速したといえる。
いわゆるロックダウン(都市封鎖)やソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の取り組みで、経済全体に占める売上比に比べ、S&P 500種の時価総額比で多く含まれるインターネット関連の小売りやSNS(交流サイト)、動画配信などのビジネスがますます有利となり、業界ごとにDX(デジタル・トランスフォーメーション、デジタル化によるビジネスモデルの改革)の進展で、企業の状況が二極化した。数年かかると思われた変化が、コロナ・ショックをきっかけに一気に進んだ面はあるが、ショック自体が業種別比率の変化の方向を変えたのではないと考える。
さらに、同業種内で二極化(勝ち組と負け組)が進んでおり、今後、企業の淘汰が進展・加速するだろう。これは業種別比率とは異なる種類の産業構造の変化というべきだ。例えば衣服を販売する業態では、EC(e-コマース)を取り入れた企業が生き残り、既存の店舗販売だけに頼れば淘汰される。“何を売るか”ではなく“どう売るか”が勝敗を分けることも、構造変化と呼ぶべきだろう。
“どう売るか”に関わるDXの仕組みを提供する企業には、サーバとそれを使ったクラウドのビジネスをしているIBMやヒューレット・パッカード、アクセンチュアなどといった従来型の大手企業が多い。つまり、コロナ・ショック前後で、社会や人々の価値観が大きく変わる可能性が産業構造の変化をもたらすとの考え方もあるが、投資の観点からは「変化」に見えて実は変化ではない(元々そういった事業だった)業界もあるということだ。
また、テレワーク導入がますます進むといわれるが、コロナ禍前のようにオフィスで業務をしたいといった従業員側の要望もあるようだ。そうであれば、懸念されているオフィス向け不動産需要の低迷は、良い物件の人気が高まり悪い物件が敬遠されるといった二極化をもたらすのであって、業界全体が縮小すると決めつけるのは早計だろう。
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