コロナ・ショック後の経済成長と景気:KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)
コロナ・ショックは、失業者数などでみるとリーマン・ショックを超えるとみられるが、財政出動や金融支援、ロックダウン(都市封鎖)などの解除で短期間でいったん終息するとみている。そうなれば景気サイクルとみてよいだろう。
人は、健康であったり病気になったり、機嫌が良かったり悪かったりする。それでも、人は10歳から20歳になれば一般に成長する。経済も同じで、景気が良くなったり悪くなったりするが、長い目で見れば成長する。“景気”という言葉は、景気循環(サイクル)というように経済の上下動部分だけを取り出してみる考え方だ。GDP成長率は、長期的成長と景気循環を合わせたものとなる。
コロナ・ショックは、失業者数などでみるとリーマン・ショックを超えるとみられるが、財政出動や金融支援、ロックダウン(都市封鎖)などの解除で短期間でいったん終息するとみている。そうなれば景気サイクルとみてよいだろう。一方、リーマン・ショックでは、約2年間雇用が減り続け、回復に4年以上かかっている。
米国消費を中心に世界経済の成長をみる
世界経済は複雑だが、単純化したほうが投資の意思決定には便利だ。ここでは、米国の消費を中心に世界経済の成長を考えよう。米国は、主要先進国の中でも大幅な輸入超過で世界総需要の中心地だ。日本やドイツは輸出超過で、その仕向け先は中国などアジアへの部品や機械が多いのだが、ポイントは、その生産物の最終消費地である米国の動向だ。もちろん日本やドイツの消費も大きいが、米国よりも世界経済の成長への貢献度は小さいとみている。
世界経済の成長のイメージ図を見てみよう。スタートを米国の売り上げや雇用・賃金の増加による消費の成長だとする。米国が輸入するので中国、メキシコなどの生産が増える。「世界の工場」と呼ばれる中国は、部品や製造のための機械や原材料、エネルギーが必要となり、関連する資源国や日本、ドイツ、韓国、オーストラリアなどから輸入する。そして、新興国を含む世界の経済成長を、米国はブランドやライセンス、資本市場への投資などで回収して成長が続く、といった構図だ。
これはくれぐれもサイクルではない。成長はサイクルではなく、「景気は成長しない」といってもよい。成長がその成長した部分を使って、“複利効果”でさらなる成長を生み出すのだが、それをサイクルととらえると分かりにくくなる。
このイメージ図では示していないが、成長の源には、規模の拡大(人口増など)だけではなく、生産性(1人当たりの生産台数、収入など)の改善も含まれる。米国は移民で人口も増えているが、ITなどの技術開発で生産性も高まっている。
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