コロナ・ショックでトレンドは終わったのか:KAMIYAMA Reports(1/3 ページ)
新型コロナウイルスの世界的な拡大を受けて、これまで重視してきた「リーマン・ショックからの米国の雇用回復→賃金上昇→消費拡大→貿易拡大が世界に波及」という大きなトレンドは、いったん止まるが、終わるということではない。
新型コロナウイルスの世界的な拡大を受けて、これまで重視してきた「リーマン・ショックからの米国の雇用回復→賃金上昇→消費拡大→貿易拡大が世界に波及」という大きなトレンドは、いったん止まるが、終わるということではない。
ただし、いったん止まったトレンドが、元のトレンドに再び動き出すかどうかは、感染者増に早期に歯止めがかかるのか、人々の行動や消費を抑え込む諸制限が今年5月ごろまでに緩和や解除に向かうのか、にかかっている(消費自体の回復は時間がかかるだろう)。長期化すると、需要不足が金融の不健全さ(不良債権など)につながってしまう。
筆者のメイン・シナリオでは、今年5月ごろに感染拡大防止策の効果が見え始めると期待(CDC米疾病対策センターが8週間のイベント自粛要請、3月15日)し、欧米で4−6月期を底に2四半期のマイナス成長になると予想する。
このメイン・シナリオでは、かろうじて雇用回復→賃金上昇→消費拡大→貿易拡大の「トレンドは終わらない」と予想している。米国の雇用は、いったん毎月数十万人単位で減少する恐れがあるが、現時点において、リーマン・ショック時のように2年近くにわたり累計870万人程度の雇用が失われる事態は想定していない。
メイン・シナリオの範囲であれば、リーマン・ショック時と異なり、原因が金融システムの揺らぎではないので、政府の感染拡大防止策で一時的に需要不足が起っても、感染拡大が収束すれば早期の回復が期待できる。そもそも好調な雇用環境であった状態に戻れば、一時帰休の雇用者も元の職場などに戻る可能性が高い。
しかし、1年程度など、正常化までの期間が長くかかってしまうと、調整に時間がかかりやすい労働市場に大きく負荷がかかり(例えば、暮らしに困って引っ越しし、別の条件の悪い仕事に就き、求人が回復しても戻れなくなるなど)、金融システムにも負荷がかかる(融資先の資金繰り困難で、銀行が損失を計上して追い貸しできないなど)。
この場合、現状の「リーマン・ショックからの回復」というこれまでのトレンドは終わり、リーマン・ショック時と同様の「雇用大幅減少からの回復、賃金上昇率の低下からの正常化、消費の落ち込みからの回復、貿易回復」という「コロナ・ショックからの回復」という大きなトレンドを考え直す必要が出てくる恐れがある。
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