コロナ・ショックでトレンドは終わったのか:KAMIYAMA Reports(2/3 ページ)
新型コロナウイルスの世界的な拡大を受けて、これまで重視してきた「リーマン・ショックからの米国の雇用回復→賃金上昇→消費拡大→貿易拡大が世界に波及」という大きなトレンドは、いったん止まるが、終わるということではない。
投資アイデアはあるのか
これまでの「リーマン・ショックからの回復」というトレンドが継続する、と想定した上で、いくつかのパターンで投資の基本戦略を考えてみる。投資アイデアの詳細は個々人の投資目的とリスク許容度により異なるが、一般的に長期投資を前提に投資している資金を景気悪化を理由に引き揚げることはお勧めしない。
フルインベストメントしていた人:
投資に追加する資金が残っていない人は、概念として、例えば戻りの鈍そうな投資先(負け組)を、大きく戻りそうな投資先(勝ち組)に入れ替えることが考えられる。ただし、どれが負け組かは判断が難しく、短期的な戻りを当てにして入れ替えても、長い目で見ればあまり変わらないことが多いので、結局何もしない方が良い場合が多い。
長い目で見ても戻りを期待して何かしたい場合は、債券への投資比率が高ければ、株式などの投資比率を少し引き上げることが考えられる。この場合、ある程度株価指数が回復すれば、当初の目的や適切なリスクに合わせて債券の投資比率を元に戻すことを忘れないようにしたい。
余裕資金がある人:
投資したいが、これまで株価が高いと感じて投資を渋っていた人は、米国を含む世界の株式へ、資産取り崩し世代で割安さを狙いたい人は、分配金が大きい(しかし株式ほど成長を見込まない)REITへの投資を検討してはどうだろうか。すでに、このような投資配分が行われている場合は、例えばロボティクスなど自らが信じる未来に関わる投資への資金追加を検討してみることが考えられる。
リスクを避けたい人:
こわごわ投資をしていた人は、これを機会にさらにリスクを減らしたいと、債券の投資比率を引き上げようと考えるかもしれない。しかし、今後、財政政策が注目され、その効果が大きい場合、過去30年ほどにわたる金利低下傾向が変化し、主要国金利が上昇傾向になる恐れがあることも考えに入れていただきたい。
債券は株式などに比べて値動きの変化が相対的に小さいが、過去に比べて値上がり益の追求は難しく、元本の保全を目的とするという位置づけの方が大事になる可能性を忘れないようにしたい。
セクターや国・地域:
出遅れたセクターや国・地域は、回復時にリターンが相対的に高くなりやすい。ただし、個々にみると、日本株は出遅れがちだが、消費税増税直後にコロナ・ショック、オリンピック延期で目先の景気下押しもあり得るので、どのように市場が織り込んでいくのかを判断するのが難しい。
世界的な需要を抑え込む要因となっている外出禁止などの対策が終わり、積極財政の効果が出てくる時期には、景気回復をけん引するのは、日本でも輸出関連企業からとなるかもしれない。安全資産としての円、というストーリーは弱まっており、今後世界景気の悪化リスクが高まっても、先進国間の金利差が縮小していることなどから、一方的な円高となる可能性は、過去に比べて低い。
また、リーマン・ショック直後と同様、コロナ・ショックでも感染拡大が他国に先行し、政策も強く打ち出されている中国が世界景気の回復をけん引する可能性はあるが、コロナ・ショック前に下げ過ぎたとはいいにくく、市場で相対的に大きなリターンが獲得できるかは分からない。
いずれにせよ、トレンドからの一時的落ち込みからの回復を投資のテーマとするもので、長期投資というよりも機動的な投資の考え方であり、当り外れがあることは認識しておきたい。
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