米国株はいま買いなのか?:KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大懸念から、世界の株式市場が揺れ動いている。例えば米株価指数は、2019年の上昇のかなりの部分を帳消しにした。それでも、世界の中でとりわけ米国株は良い投資先なのか。
新型コロナウイルスの感染拡大懸念から、世界の株式市場が揺れ動いている。例えば米株価指数は、2019年の上昇のかなりの部分を帳消しにした。それでも、世界の中でとりわけ米国株は良い投資先なのか、という質問が多い。筆者は、米国株は長期的に見て良い投資先と考えている。市場のタイミングを計って売買する短期的な投資の観点ではなく、そもそもどのような経済に投資するのかを考えてみよう。
米株価指数の推移を見ると、17年から上昇傾向が続き、18年末に政府機関の一部閉鎖や景気後退懸念から大幅下落したものの、まもなく上昇し、足元、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で下落している。
新型コロナウイルスの感染拡大がどの程度影響するかを予想することは難しいが、投資に当たっては、次の想定をしておきたい。一時的な需要減(買い物に行けないなど)、供給減(お店にモノがない、工場に部品が届かず製造できないなど)により、経済が低迷する可能性はあるが、ここで満たされなかった需要は、その後の正常化で上乗せされる傾向にあることを忘れないようにしておきたい。
ここでは、一般的に、米国経済と企業収益、ひいては株価が長期にわたり順調に成長してきたことを確認しておくことになる。しばしば、政治の混乱や金融政策の変更などが起こるのだが、長期的に株価に悪い影響を与えたわけではない、と言って良いだろう。
産業構造は成長重視で、政治体制は安定
米国株式市場が日本株式市場と大きく違う点があるとすれば、産業構造だ。S&P 500で時価総額比率が大きい銘柄は、いわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などで、株式市場のけん引役となっている。日本株式市場で時価総額上位に銀行や自動車などが多いこととは対照的だ。
GAFAは、アップルのようなメーカー、アマゾンのような小売、グーグル(アルファベット)やフェイスブックのようなコンテンツによる(一種の)広告業、などに分かれており、情報技術などと簡単に分類できない。
このような企業群がサーバなどに投資する場合、製造業においては、日本やドイツ、中国などが供給を請け負うことになるので、日本であれば電子部品や一般産業機械など情報通信産業のバリューチェーン上の企業群に恩恵がある。しかし、世界の成長をリードする産業は、発注を受ける(受注する)側というよりも、設備投資をリードし発注する側になるだろう。アイデアをビジネスとして立ち上げ、資金を調達し、成功して成長する企業・産業が、米国経済と株式市場を支えている。
米国株式への長期投資とは、米国の経済成長への信頼に依拠する。移民政策による人口増も大事だが、そもそも移民したいと思う魅力の根源は、教育システムの充実や成功のための機会の平等、ベンチャー資金や目利きの豊富さにある。
大統領選が近づき、国内の分断が進むのではないか、「社会主義」が経済成長を抑えてしまうのではないか、との心配もあるが、三権分立など基本的な民主制度が揺らぐとは考えにくい。仮に将来において民主党のサンダース氏のような福祉重視の考え方が米国大統領や議会多数派を支配しても、企業の取り分が減っても消費者の取り分が増える(社会保障の充実等)と考えるべきで、長期的に起業家のアイデアに始まる成長を止めてしまうとは考えにくい。
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