「世界の工場」中国への依存度:KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)
世界経済の観点からみると、中国の消費は世界経済にとってそれほど重要ではない。むしろ、中国は世界の工場として、いわゆるサプライチェーンの生産拠点として重要な意味を持っている。
新型肺炎(新型コロナウイルス)の感染がどの程度拡大し、経済にどの程度影響するかを予想することは難しい。
ただし、世界経済の観点からみると、中国の消費は世界経済にとってそれほど重要ではない。自動車など一部の製品で中国の最終需要が大きなシェアを占めることもあるが、一般に中国の最終消費が世界経済の成長にとって重要とはいいにくい。
むしろ、中国は世界の工場として、いわゆるサプライチェーンの生産拠点として重要な意味を持っている。日本や韓国の部品を使い、台湾の会社が中国の工場で日本やドイツの機械を使って生産し、米国ブランドで中国製スマートフォンが世界中で売られている、という例が分かりやすい。
長期にわたる生産停止は世界経済に影響を及ぼす
中国製スマートフォンを例にすれば、中国の最終需要が大事なのではなく(需要は世界中にある)、生産ができないことで需要がある地域に商品が届かないことの方が問題だ。つまり、売るための商品の供給量が減ってしまうことで、世界の需要が満たされず、中国国外の経済成長率が低下してしまう。
生産拠点として、世界経済の中国依存度は高い。中国の輸入品を見ると、7割程度が工業製品であり、製造のための機械類や半製品、部品などが多い。その他の中で大きな比率を占めるのは石油などで、一部は生産に必要なエネルギーとして利用されていると考えられる。
中国の輸入相手国を見ると、韓国、日本、台湾、米国、ドイツの順に多い(2018年、JETRO)。つまり、電気機器や自動車の部品、製造用の一般機械などが先進国から持ち込まれ、中国の工場で生産するときに利用されている。一方、中国の輸出相手国を見ると、香港を除けば、米国、日本、韓国の順となる(同)。
つまり、輸入した国へ輸出していることから、中国は世界の工場であり、販売先は輸入元と同じとみなすことができる。結局のところ、世界の工場としての「依存」は、工場という立地面での依存ということになる。
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