10年後を見据えた中国への投資:KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)
今後、中国市場は安定し、投資家は比較的高い成長を享受できると期待。株式投資では、テクノロジーや消費などの成長に注目しつつ、アクティブ運用で産業トレンドをリードあるいはフォローする銘柄を厳選すべき。金利や為替の安定を想定するならば、社債などを含めたオンショア投資の機会は拡大する。
日興アセットマネジメント(東京)は2019年12月27日、関連会社で深圳に拠点を置くロントン(融通)・ファンド・マネジメントと日興アセットマネジメントアジア(シンガポール)とを結び、中国の未来と投資を考えるコンファレンスを開催した。
討議後の筆者の結論は、「今後、中国市場は安定し、投資家は比較的高い成長を享受できると期待。株式投資では、テクノロジーや消費などの成長に注目しつつ、アクティブ運用で産業トレンドをリードあるいはフォローする銘柄を厳選すべき。金利や為替の安定を想定するならば、社債などを含めたオンショア投資の機会は拡大する」というものだ。リスクとしては、今後の中国の資本移動に関する規制強化の可能性、貿易摩擦を含む外交政策などが考えられる。
株式投資:安定上昇と高い付加価値の追求
中国を代表する上海総合指数を見ると、経済成長のわりに株価指数のリターンが低い印象だった。過去10年のパフォーマンス(下グラフ表示期間)は約2%の上昇に過ぎない(テクノロジー中心の深圳総合指数は同期間で約54%上昇)。短期的に上昇することがあっても、長期的には横ばいに見える。
しかし、中国では老舗の運用会社(中国の公募投信会社は1998年からで、ロントンは2001年創立)として中国を長らく見てきた国内プレイヤーの代表であるロントン・ファンド・マネジメントの株式投資責任者らは、いま構造的な変化が起こっていると考えている。
これまでの中国株式市場の構造的な問題は、(1)中央集権的でひとつの政策方向に皆が一斉に向かうため過熱しやすい、(2)上場、上場維持基準が緩く、業績不振銘柄の退出がおきにくい、(3)個人投資家主導で投機的傾向にある、といった点にあった。しかし、近年、(1)景気刺激策として不動産事業のウエート低下や地方政府の資金調達適正化、(2)上場廃止基準の厳格化、(3)機関投資家主導の市場へ、といった変化が明確になってきている。
これらの構造変化で期待される効果は、株式市場の「安定した上昇」への期待だ。日本、韓国、台湾の例を見ても、構造変化の転換期があった。それ以後は、どの国でも成長率が低下し、質の改善を志向するようになっている。
中国は2010年ごろから、構造変化が始まっており、今後成長率は中程度で安定することが予想される。日本や韓国と比較した場合、市場メカニズムを利用しない部分が大きいことのメリットとして、制度改革は緩やかだが着実に進むと期待されること、集中投資でテクノロジーの進歩が期待できること、がある。
さらに、国内に巨大市場を有すること、技術者の絶対数の多さなどが、今後の中国のチャンスとなる。消費関連を例にとると、化粧品セクターは景気にディフェンシブな面もあるものの、一人当たりでみた可処分所得が増大しているのに、化粧品の消費は伸びておらず、成長余地が大きい。
テクノロジーの技術革新は、さまざまな分野で発展段階にある。中国政府は、過去の反省からテクノロジーは補助金だけでは育たないと認識しており、市場メカニズムに任せて海外商品を安易に導入することを避けつつ、民間の活力を活用していくと期待される。高付加価値商品を生み出すことが、中国を中所得国から高所得国へと移行させていくはずだ。
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