「新興国」と一括りにできない理由:KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)
いまでも「新興国(エマージング)」は、米国金利が上がっても下がっても、原油や資源価格が上がっても下がっても大丈夫なのか、などと質問を受ける。しかし投資において、新興国を一括りに分析することが難しくなってきたと考える。
BRICSから「中国とそれ以外」へ
いまでも「新興国(エマージング)」は、米国金利が上がっても下がっても、原油や資源価格が上がっても下がっても大丈夫なのか、などと質問を受ける。しかし投資において、新興国を一括りに分析することが難しくなってきたと考える。「新興国」の代表であるBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(後から加わった))をひとつにまとめるようになったのは、2001年ごろといわれる。2011年にはBRICSの首脳会談が行われるなど、投資や経済だけではなく、政治や外交でも使われるようになった。
そもそも新興国とは、発展途上国の中でも、特に顕著に成長率が高く、世界経済への影響も大きい国や地域と考えられてきた。IMFが新興国と呼ぶ地域はBRICS以上に幅広いが、日本からの投資先として知られるBRICSとトルコの6ヵ国をみると、新興国のGDPの60%以上を占めている。この観点からは、新興国≒BRICSであるという状況は今でも変わっていない。
しかし、現時点で投資家が投資戦略を考えるに当たり、「新興国」を先進国との対比だけで考えることは単純すぎる。まず、BRICSに占める中国の比率が高いことは一目瞭然だ。GDPに占める中国の割合をみると、新興国全体の4割程度、BRICS全体では6割を超えている。それゆえ、「中国とそれ以外」の分類が分かりやすいだろう。
中国は、国内に石油などの資源を持つとはいえ資源輸入国であり、加工貿易国と考えることができる。世界の工場として、Made in Chinaの製品を世界に供給している。しかし、国を代表するブランドは通信のファーウェイ程度で、付加価値の高い商品を生産し、高い生活水準を獲得しているとは言いがたい。沿海部は比較的良好だが、内陸部の生活水準や一人当たりの生産性は先進国と比較して低い状態にある。この意味で、中国はいまだ「中所得国」であり、だからこそ先進国となるまでの成長余力が大きいはず、と考えて良いだろう。例えば、中国の自動車が世界市場で一目置かれるようになれば、中国の生活水準は上がり、消費国としても重要になるだろう。しかし、そうなるためには、さらにイノベーションを続け、高品質商品を宣伝などで訴求し、販売網や中古市場を確立し、高価格で世界市場で販売できるブランドを持つ国になる必要がある。通信など西側先進国の安全保障に関わる分野では期待しにくいが、いつの日か電気自動車やフィンテックなどでは強みを持つ企業を輩出する可能性がある。
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