2020年の投資対象としての日本:KAMIYAMA Report(1/2 ページ)
2019年の世界や日本のマーケットは、2018年末にあった景気後退懸念の払拭から始まり、総じて好調だった。日経平均株価は2万円程度から始まり、執筆時点では2万3千円台で推移している。世界経済は減速しながらも健全な成長を続け、年末に向けて日本経済への信頼感も回復している。
2019年の世界や日本のマーケットは、2018年末にあった景気後退懸念の払拭から始まり、総じて好調だった。日経平均株価は2万円程度から始まり、執筆時点では2万3千円台で推移している。5月と8月は、それぞれ米中貿易交渉の進展度合いが市場心理に影響を及ぼし、一時的に景気後退を懸念する局面があったが、実体経済はそれほど悪化せず、世界経済は減速しながらも健全な成長を続け、年末に向けて日本経済への信頼感も回復している。
2019年の振り返るべきポイントは、懸念と現実の差だ。何度も「懸念」にさいなまれたが、現実には貿易摩擦(関税引き上げを含む)がそれほど世界の経済成長に重大な「結果」を与えたとはいえない。5月と8月の「景気後退懸念」は、結果として景気後退が起こっていないことで12月までにおおむね払拭され、株価指数は回復に至っている。
世界景気の減速は、そもそも米国消費を中心とした需要の横ばい(成長率の減速)に始まっている。米国では、雇用が順調に増加し、賃金上昇率もリーマンショック前の水準に戻っており、小売売上高にみる需要の回復も確かなものとなった。
減速の理由をすべて貿易摩擦とみなすと、思考停止の恐れがある。製造業の追加的な投資意欲を一時的に失わせた面は否定できないとしても、2019年のトランプ政権の対中追加関税は、米国の安定した内需を揺るがしていないとみている。
2018年からの中国需要の低迷も、貿易摩擦のみで説明することは不十分で、中国自身の政策であるデレバレッジの影響の方が大きく、すでに中国政府がその影響を少しづつ取り除いていっている。
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