2020年の世界:投資テーマとイベント一覧:KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)
最大の注目イベントは、米国大統領選挙とそれに係わる政策論争で、市場の振れを増やすことになるだろう。しかし、長期投資の観点からは、選挙結果で世界経済のトレンドに大きな変化が起こるとは想定しない。
健全な低成長とインフレの“匂い”
2020年の世界経済は、低成長率とはいえ健全さを保つと考える。18年に16年の低迷からの反動で比較的高い成長を実現した先進国は、19年に減速した。例えば、米国の小売売上高は、17年から加速し、18年に高い成長となったが、19年に入って成長率が低下した。
しかし、売上高それ自体が低下(減少)したのではない。500万円の収入が550万円になれば10%成長、それが600万になれば9%成長となるように、増加額は同じでも、収入水準の上昇に伴って成長率が「落ち着いてきた」ととらえることができる。つまり、世界の成長トレンドが壊れたのではなく、成長サイクルが緩むタイミングにすぎないといえる。
19年には、中国のデレバレッジ(過剰債務の削減)の影響もあり製造業の減速が目立った。しかし、米国をはじめ先進国ではサービス業の安定で雇用が増え、給与も上昇傾向だった。総じて経済は健全で、20年は堅調な需要を背景に製造業も緩やかに持ち直すだろう。
日本株にとってポジティブなシナリオは、20年後半にもインフレの“匂い”がしはじめることだ。世界的に「賃金が上昇しているのにインフレにならない」状態が続いている。
米国では、19年に入って、賃金上昇は加速傾向だがインフレの兆しが見えないことで、FRB(米連邦準備制度理事会)は「予防的利下げ」を行うことができた。しかし、欧米をはじめ世界的に消費が堅調で、需要総量は伸びる可能性がある。日本では、実質輸出がすでにリーマン・ショック前の水準に戻っており、ここからさらに売上げが伸びれば、在庫減、生産増、設備投資や残業増といった形で、経済拡大と「お金よりモノ」というインフレ・マインドが高まる可能性も出てくる。
もちろん輸出数量増だけでは一般物価は上がらないが、消費税増税の影響が思いのほか小さければ、20年末までに、日本でも実質所得の増加とインフレ期待が出てくるかもしれない(メイン・シナリオとするには少し気が早いが)。そうなれば、日本株に対する外国人の興味は大きくなるはずだ。
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