株価の下値めどとシナリオ 米国の8週間程度の活動自粛を織り込む金融市場:KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)
仮に、5月10日ごろまで事実上の外出禁止を含む自粛ムードが続いた後、全米でウイルス収束の兆しが見え、2020年7−9月期に主要都市で経済活動が正常化に向かうのであれば、現在の日米株価指数の水準は、今後8週間は中止または延期のシナリオと整合的だと考える。
3月23日時点、日米の金融市場は米国の8週間程度の活動自粛後の回復を想定している、と筆者は考えている。米疾病対策センター(CDC)が3月15日、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、スポーツを含めた「大規模行事や集会」を、今後8週間は中止または延期するよう勧告した(3月16日付AFP)。
仮に、5月10日ごろまで事実上の外出禁止を含む自粛ムードが続いた後、全米でウイルス収束の兆しが見え、2020年7−9月期に主要都市で経済活動が正常化に向かうのであれば、現在の日米株価指数の水準はこのシナリオと整合的だと考える。
見方を変えると、8週間程度の活動自粛は、リーマン・ショック時の半分程度の経済悪化(米国は2四半期程度のマイナス成長)と考えられるので、株価指数の下落率もリーマン・ショック時の半分程度と想定ができそうだ。仮にそうであれば、現時点で、「リーマン・ショック時と同じ想定」で株価の下値めどを考察することは行き過ぎだろう。ただし、ウイルスの収束時期を予測することは難しいため、8週間で収束の兆しがなければ、さらに下値不安が高まる恐れは残る。
コロナ・ショックのスタートを2019年12月末(S&P 500で3,230.78、直前高値)、2007年10月末から2009年2月末までをリーマンショック時の下落期間として株価の下値めどを考えてみる。リーマン・ショックと同じ下落率(16カ月間で▲53%、月末ベース)になると想定すれば、8週間ではなく今夏まで収束しないと考えられる。
株価指数でみると、3月20日のS&P500(2,304.92)は2019年12月末から▲29%と、リーマン・ショックの下落率の半分程度で、リーマン・ショック並みならここから▲33%の1,533程度が下値めどとなる。
予想PBRでみると、S&P500はここから▲35%*、予想PERでみると、ここから▲43%程度**がありうる。
ただし、予想PERを想定する場合、予想EPSと株価の動きに時間差が生じるので、注意しておく必要がある。
- * 3月20日時点の2.5倍 ⇒ 2009年2月末時点の1.6倍に低下した場合
- ** 2007年10月末から2009年2月末の間に、予想EPSが▲34%、予想がPER▲28%になったことを当てはめ、3月20日時点から、予想EPSが▲34%(現状高止まりしているので低下率が高い)、予想PERが▲14%になった場合
注)数値はすべてS&P500
新型コロナウイルスの収束時期は予想できないが、金融市場は、現時点においてCDCが示した8週間の非常事態を収束のめどとして織り込み、世界的に2四半期程度のマイナス成長となった後、経済が正常化に向かう想定をしているようだ。逆にいうと、現時点でリーマン・ショック並みにマイナス成長が1年以上続く景気後退の想定は、CDCを参照する限り悲観的過ぎる。仮に前述の想定が正しいとすれば、現在の株価水準が下値めど、ということになる。
もちろんこの背景には、十分な金融・財政政策の実施が想定されている。ウイルスが収束するまでは、収束への期待感が市場心理を揺さぶるだろうが、主要中央銀行が最近発動した金融政策は、リーマン・ショック時以上に充実した内容で、一定の効果が期待できる。財政政策については、財政の支出規模と出動するタイミングが重要だ。
日米をはじめ主要国の緊急対応(所得補填など)は迅速、かつ十分な内容が期待できるが、例えば日本のように、景気の落ち込みから回復するための補正予算等について、与野党の攻防で審議が遅れることも予想される。しかし、適切な財政政策が示されるのであれば、一時的に多少の下落があったとしても(株価指数は数日で10%程度すぐ動いてしまうが)、収束シナリオが変わらなければ、下値模索は短期間に終わるだろう。
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