コロナ・ショックからの回復を支える財政拡大:KAMIYAMA Reports(1/3 ページ)
過去最大級の経済対策を決定した日本では、今後感染拡大防止が奏功した段階で、地域活性化などのアイデアの具体化を含む追加対策が打ち出されることになるだろう。米国では、追加の経済対策が議論され始め、欧州でもEUがルールを一時緩和し、機動的な財政政策が打てるようになった。
過去最大級の経済対策を決定した日本
4月7日、政府は事業規模108.2兆円の「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を閣議決定した。すでに実行されている第2弾までの緊急対応策は、臨時休校に伴う保護者に対しての助成金制度などに2463億円、事業活動縮小や雇用への対応に1192億円など、文字通り緊急支援が中心で、需要拡大というよりも感染防止策を発動した政府自身による機会費用の保障が中心だった。そして、今回発表された緊急対策は2つのフェーズが用意された。
一つが「緊急支援フェーズ」で、事業破綻防止(収入が減少した中小企業・個人事業主への資金援助や納税猶予など)と、生活破綻防止(収入が減少した低所得世帯への現金支給など)、感染拡大防止(有効な治療薬と目されるアビガンの200万人分の備蓄確保など)などが示された。もう一つが「V字回復フェーズ」で、大幅に落ち込んだ消費や投資の喚起が盛り込まれた。
しかし、今回発表された緊急対策の内訳を見ると、19年度補正予算未執行分を除けば、V字回復に対する配分は大きいとはいえない。結局これまで明らかになった政策は、大部分が緊急支援策であり、現金支給と利子補給などが支出の大きな部分を占めている。
感染拡大を防止するために経済活動を制限している現状において、V字回復策を実行しても効き目はない。しかし、今回の感染拡大防止のための行動制限で落ち込んだ分を埋め合わせるだけで、成長軌道に戻すためには不十分だろう。
今回の緊急対策は、感染拡大が収束するまでの間は緊急支援フェーズ、終息後に反転攻勢に向けたV字回復フェーズ、が基本的な考え方としていることから、今後感染拡大防止が奏功した段階で、地域活性化などのアイデアの具体化を含む追加対策が打ち出されることになるだろう。
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