コロナ・ショック後の経済成長と景気:KAMIYAMA Reports(2/2 ページ)
コロナ・ショックは、失業者数などでみるとリーマン・ショックを超えるとみられるが、財政出動や金融支援、ロックダウン(都市封鎖)などの解除で短期間でいったん終息するとみている。そうなれば景気サイクルとみてよいだろう。
コロナ・ショックを景気サイクルとしてみる
現時点の情報をもとに考える限り、コロナ・ショックはリーマン・ショックや金融恐慌に比べれば短期間に終息すると予想する。新型コロナウイルスの感染拡大防止は長い期間に及ぶとしても、経済を窒息させることはできないからだ。
人為的に経済をストップさせた主要国の政策(自粛やロックダウン)は、いわば「時間を止める」政策だった。感染防止のために行動制限したとしても、終息後にはレストランや小売を以前と同じ状態で再開させたい。資金面で窒息しないようにさまざまな補助金や融資を行うが、長引くとほころびやすくなり、倒産や銀行の貸しはがしなどが進んでしまうと、リーマン・ショックの再来の恐れになる。
ウイルス感染拡大の第1波が過ぎれば、少なくとも息継ぎは必要で、ここで医療体制充実などが進めば、次の波が来ても同程度の自粛やロックダウンはしなくていいかもしれない。
長期的に見れば、経済は成長する。先進国は人口減でもロボットの利用などで1人当たりの生産効率が上がるし、新興国は高い成長率に加え、人口増で世界市場を拡大させるだろう。これに対して景気サイクルは、一般に人々の過信や悲観などから起こる。景気の「気」と気分は近い関係だ。
まず(米国にありがちだが)企業は、(1)需要増が続くと過信し、設備投資が行き過ぎ、十分な売り上げや利益でカバーできなくなる。(2)古い設備を廃棄し、従業員を減らす。失業で消費が減るのでしばらくは景気が減速もしくは後退(マイナス成長)する。(3)しかし、勝ち残った企業は市場シェアを高め、利益率を維持し、一方で財政政策や利下げなどで支援された需要が回復してくる。(4)そこで企業業績は回復して雇用が拡大、給与上昇、需要増大へとつながる。これが景気サイクルの典型だ。
コロナ・ショックを景気サイクルであるとみなす最大のポイントは、もちろん過信ではない。このサイクルは感染症対策のために政策的・人為的にスタートしたのだが、その分財政や金融政策は、すばやくかつ考えられる限り十分な規模となっている。それゆえ、例えば米国で2000万人超の雇用が失われたとはいえ、サイクルで終わるか、それとも長期悪化トレンドとなるかは、感染症の拡大を医療と公衆衛生で抑え込めるかにかかってくる。
仮に、厳しい行動制限が幅広く世界で再び始まれば、政府の支えが不十分となって倒産企業が増え、コロナ・ショックからの回復の道のりは険しくなるだろう。だが、今回の世界の経験と対策から、現時点でそのように予想する必要はないと考えている。
筆者:神山直樹(かみやまなおき)
日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト。長年、投資戦略やファイナンス理論に関わってきた経験をもとに、投資の参考となるテーマを取り上げます。
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