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「トリクルダウン」に期待してはいけない火が灯かないまま(4/4 ページ)

前政権のアベノミクスが今一つうまく回らなかった大きな要因は、「トリクルダウン」に期待してか成長戦略を粘り強く追求しようとしなかったことにある。新政権は前車の轍を踏んではいけない。

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 そうした経緯を反省するならば、新政権には是非、成長戦略の徹底追及と併せて、社会経済の上層部分ではなく下層部分に優先的におカネを回す策を考えていただきたい。生活保護世帯や一人親世帯のように生活に困っている人たちへの経済的支援は乗数効果の高い、有効な経済政策なのだ。社会経済の下層に位置する彼らは、おカネが手に入れば生活のためにすぐに使ってくれる。それがすなわち世の中のカネ回りをよくし(=景気をよくし)、日本経済の成長につながるのだ。

 その意味で、コロナ騒ぎの最中に自民党が進めようとした減収世帯への30万円の現金給付(「生活支援臨時給付金」)は正しい政策だった。与党・公明党の圧力で実行することになった(全国民に1人当たり10万円を給付する)「特別定額給付金」は、将来不安に脅える多くの一般世帯で使われないまま国家財政をさらに痛ませる結果となっており、数年後には冷静になった識者・国民から「なぜあんな馬鹿なことをしたのか」と非難されるだろう。

 話を戻そう。中央官僚の人たちには、菅首相の「自助」を先決させる言葉を間違って忖度することで、社会的弱者を切り捨てるような政策には決して踏み外していただきたくない。それは政府の役割を放棄するも同然の所業だ。

 また、新政権が改めて「成長戦略」を追求しようとしていることは感じられる。そのためにそれを阻害する規制を緩和・廃止し、省庁間の縦割りの弊害を減らそうとしていることも。その際、間違っても前政権のように「トリクルダウン」の幻を追わないよう願いたい。

 心配しなくとも富裕層にはその先、どうしたっておカネは回っていく仕組みに、世の中はなっている。つまり残念ながらこの世の真実は冷酷で、「トリクルアップ」になっているということだ。 (日沖 博道)

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