タクシーの飲食品デリバリーが配送業界を根底から変える訳:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
タクシーの飲食品配送が事実上の恒久化に。コロナ禍への一時的対応だけでないと筆者は指摘。配送業界を根底から変えるイノベーションに。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一時的な措置だった、タクシーによる飲食品配送の取り組みが10月から恒久化された。これは極めて大きな変化であり、場合によっては外食、ひいては小売りの光景が一変するインパクトを持っている。タクシーでデリバリーができるようになると何が変わるのだろうか。
恒久化で配送インフラの常識一変
これまで人を運ぶ事業者であるタクシーが、荷物だけを運ぶことは規制によって禁じられていた。タクシーは「旅客運送」と呼ばれ、宅配など荷物を運ぶ「貨物運送」とは別カテゴリーになっているが、これには相互参入を規制することで過当競争を防ぐ狙いがあった。
ところが新型コロナウイルスの感染拡大が状況を大きく変えた。
コロナ危機によって宅配ニーズが増え、宅配業界はむしろ需要が拡大したが、外出自粛などによってタクシー業界は致命的な打撃を受けた。現時点でも客足が回復しないことから、実質的に休業状態を続ける事業者も多い。
国土交通省はこうした事態に対処するため、9月までの時限措置として、タクシー事業者に対して飲食品の配送を許可する決定を行った。この措置によって多くのタクシー事業者がデリバリーに参入し、すでに1800社近くが特例の許可を得て飲食品のデリバリーを行っている。
同省は、参入を希望する事業者が多かったことや、利用者からの評判も良いことから、許可の期限を2年に延長する決定を行った。期限については再延長も可能なので、事実上、制度の恒久化と考えて差し支えないだろう。つまり、飲食品に限るという条件はあるものの、旅客運送事業者が貨物運送に乗り入れることが可能となる。
今のところタクシーによる飲食品の配送は、特定の飲食店がタクシー会社と契約しているパターンがほとんどなので、不特定多数の人が利用しているわけではない。だが、今回の決定は長い目で見た場合、飲食店のビジネスを一変させる可能性を秘めている。
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