タクシーの飲食品デリバリーが配送業界を根底から変える訳:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
タクシーの飲食品配送が事実上の恒久化に。コロナ禍への一時的対応だけでないと筆者は指摘。配送業界を根底から変えるイノベーションに。
待ち受けるは自動運転システム
タクシーを活用すれば、従来の宅配事業と同じ規模の配送インフラを一瞬で構築でき、社会全体の配送能力は大幅に拡大する。配送の低コスト化も進むので、デリバリービジネスの爆発的な普及を促すきっかけとなり得るだろう。
各業界への影響が大きいことから、場合によっては、今回緩和した規制を元に戻すという動きが出てくるかもしれないが、一度オープンにした環境を逆転させるのは現実的に難しい。結果として、今回の解禁措置はデリバリーシフトの不可逆性をさらに強化することになるかもしれない。
もし運送を許可する対象が食品以外にも拡大された場合、その影響は計り知れないほど大きくなる。タクシーのインフラを一般的な商品の配送に使うことができれば、コンビニなどの小売店は随時、必要なものを配送してもらうという動的な仕組みに移行できる。
従来のように1日のうち決まった回数だけ集中して配送を受けるのではなく、商品の売れ行きを見ながらリアルタイムで必要な商品を受け取ることができるので、売上高の最大化が可能だ。
こうしたインフラ網の先に待ち受けているのが自動運転システムであることは論を待たない。最終的には旅客も荷物も運ぶ自動運転車が縦横無尽に走り回り、リアルタイムで商品や乗客を運ぶ光景が日常的になるだろう。
イノベーションを促す規制緩和は積極的に進めていくべきであり、こうした取り組みこそが、最終的には抜本的なコロナ対策にもなるはずだ。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。
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