羽田空港で走行! 自動運転が可能な「WHILL」は移動手段になるのか:近距離モビリティ(4/5 ページ)
車いすでもバイクでもないパーソナルモビリティ「WHILL」に、注目が集まっている。今年6月、自動運転システムを搭載したタイプが羽田空港で実用化。また、世界各国の空港でも導入の検討が進んでいるというWHILLは、新時代の移動手段となりえるのか。
世界初の快挙。羽田空港でWHILLの実用化
WHILLは、一般ユーザー向けの販売・レンタルに加え、MaaS事業も手掛ける。これは、テーマパークや病院などの施設で短距離の移動手段として、WHILLをシェアリングで活用するものだ。20年6月には羽田空港第一ターミナルに3台のWHILLが正式導入され、世界初の事例として国内外のマスメディアで多く取り上げられた。
施設内を走行するWHILLは、時速約3キロと一般向けの機種より減速したことに加え、同社初となる「自動運転システム」を搭載。地図情報をインプットしたコンピュータを座席下に、今いる場所の把握や障害物の検知をするセンサーを後方に、センサーとダブルで障害物を検知するカメラが前方に付いている。これによりユーザーが操作せずとも障害物を避けて目的地まで走行、目的地から待機場所に戻るまでの一連動作を自動で行える。
実証実験段階ではシステムが正しく動作せず頭を悩ませたものの、WHILLにインプットした地図情報に「実在しない壁」の存在を埋め込み正しいルートに誘導させるなど、試行錯誤の末に多くの課題を解決、精度の良いシステムを完成させた。
3密の回避が求められる環境下で介助者を必要としないWHILLは、安全な移動手段として、また人員削減のために大いに貢献しているという。これまでは使用後の車いすをスタッフが手動で元の位置に戻していたが、WHILLは自動で待機場所に戻るため、かなりの手間が削減されているのだ。
「羽田空港での導入が早期実現に至った一番の理由は、ニーズが顕在化していたことです。これまではスタッフが手動で車いすを押して旅行者を運搬していましたが、コロナによってそれが“接触による感染のリスクがある”とみなされるようになり、一刻も早い自動運転可能な移動手段の導入が望まれていました。導入後は、杖を使っている方や長旅で疲れた高齢者の方を中心に多くご利用いただいています」(広報:辻阪氏)
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