2015年7月27日以前の記事
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ドコモ口座問題の本質 裏口ではなく表玄関の銀行APIを使え(2/2 ページ)

自分の銀行口座からいつの間にか預金が引き出されてしまうという、金融セキュリティの根幹を揺るがした「ドコモ口座事件」。「口座振替という“裏口”ではなく、セキュリティが高い表玄関を利用すべきだった。ネットバンキングや銀行API接続の中で、電子マネーチャージをうながしていくべきだった」。そう話すのは、電子決済等代行事業者協会の代表理事であり、マネーフォワードの取締役を務める瀧俊雄氏だ。

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2割程度しかないネットバンキング契約

 「なぜ裏口が必要だったのか? それはネットバンキングが普及していないから。電子マネーのチャージのためにネットバンキング契約をしてもらうのを、簡単に迂回(うかい)しようとしたから裏口が使われた」(瀧氏)

 決済サービスの電子マネーにチャージするために、銀行のネットバンキング契約を必須としたら利用できる人が限られてしまう。そのためにセキュリティの低い裏口を使ってしまったのが、今回の本質的な原因だというわけだ。

 ネットバンキングの普及率は低い。日本銀行が6月に行った調査によると、個人のネットバンキングの利用率は23.6%、法人は27.4%でしかない。この契約を増やしていくのが重要だと瀧氏は言う。「ネットバンキングは金融DXの初歩。にもかかわらず進んでいない。金融DXを唱える以上は、ネットバンキングを使えるようにしておかないと進まない。ネットバンキング利用率を少なくとも計測すべきだ。私たちはKPIを置くべきだと思っている」


国際的に見ても日本のモバイルバンキング利用率は最下位(瀧氏資料より)

 ただしネットバンキングの契約だけでは、電子マネーのチャージは行えない。併せて、口座からの資金移動を行える「更新系API」を、銀行側の機能として実装する必要がある。2020年の春に、情報を取得する「参照系API」の実装は金融庁のKPI設定もあって進んだが、更新系APIについては進捗が見えない。

 「銀行は更新系APIの利用事例がないので困っていた。APIを作って開放しても使われないんじゃないか? というおそれがあった。しかし、今回電子マネーのチャージという明確な用途が出てきた。裏口を運用し続けていくコストと、更新系APIを作るのとどちらが安いか。更新系APIの必要性が強調された出来事だった」(瀧氏)

 金融庁も2020事務年度(20年7月〜21年6月)の金融行政方針の中で、コロナ後の顧客ニーズに応える金融サービスづくりとして「金融デジタライゼージョン」を挙げている。本質的な対応を果たすならば、ネットバンキング契約を伸ばすとともに、更新系APIの活用を進めるべきだろう。 

 「今後の社会で電子マネーは主役になっていく。表玄関から堂々と接続すべきだ」(瀧氏)

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