セブンの「ステルス値上げ」を疑う人が、後を絶たない理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
消費者が知らない間に、こっそりと量を減らして価格は据え置き――。セブン-イレブンが「ステルス値上げ」をしているのではないかと叩かれている。なぜ、このように疑われているのか。筆者の窪田氏は、このように分析していて……。
コンビニのビジネスモデルは「限界」か
日本郵政、レオパレスなどを見れば分かるように、ガバナンス不全になっている組織は往々にして、ビジネスモデルそのものが大きな問題を抱えて、これまでのやり方が「限界」に達していることが多い。ということは、ここまで不祥事が相次いで発覚しているセブンのビジネスモデルも「限界」が近いと考えるべきだ。
その代表が、「近くて便利」を掲げて、同一商圏内を陣取りゲームのように店舗を埋め尽くしていくドミナント戦略だが、実はもうひとつ大きな問題がある。それはPBが掲げる「手ごろな価格」(セブンプレミアムWebサイト)という企業戦略だ。
「そんなのどこの食品メーカーもあたり前のように掲げている手垢のついたスローガンだろ」と思うかもしれない。そう、確かにこれは多くの食品メーカーがスローガンとして掲げている。だが、あくまでスローガンなので、外部環境が変われば臨機応変に対応していく。可能な限りの「手ごろな価格」を目指すのだ。
カップラーメンでも野菜でも小麦粉でも食品は、原材料費の高騰や原油高などの影響を必ず受けて、値上げをする。ファミレスのメニューもそうだ。しかし、セブンをはじめコンビニは、有言実行というか、本当に「お手ごろな価格」を死守するのだ。
その象徴的な商品が「おにぎり」だ。セブンのWebサイトを確認すると、「山形県産つや姫おむすび紅鮭切り身」のような190円のおにぎりもあるが、ほとんどは120〜140円帯。「味付海苔おにぎり 梅おかか」のような110円のおにぎりもある。
では、今から30年前のコンビニおにぎりは、いくらだったのかというと110円から140円だった。93年になると「従来の商品より10円から40円安い1個100円のおにぎり」(日本経済新聞 1993年3月23日)などポイント、ポイントで「激安おにぎり」というトレンドはあったが、基本的にはこの価格帯を30年間キープしているのだ。
いくらバブル崩壊後の「失われた30年」で物価が上がっておらず、コメの価格も下がっているとはいえ、この間に消費税の引き上げもあれば、原材料高騰などもあったし、人件費だってわずかながら上がっている。このような社会の変化にまったく左右されることなく、価格を維持しながら「定番商品」としての進化も続けているのだ。
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