「言いたいことを全部吐き出せる」 “AI面接官”が学生に支持される理由 アキタフーズの事例:二次面接(対人)が有意義になる(2/2 ページ)
一昨年から学生とAIとで面接をする、対話型AI面接サービスを導入したアキタフーズ。その成果は?
「学生さんの反応はかなりいいですね。会社に出向かなくていいから助かるという感想が多いですが、AIだと、ちゃんと聞いてくれるからいいという学生さんも多いですよ。一般的に面接は30分程度のことが多いと思いますが、1時間も話せて言いたいことを全部吐き出して爽快感を感じた、という学生さんが結構います」
同社では、よほどのことがないかぎりAI面接では落とさない。基本的に全員が最終面接である二次に進むことができる。ちなみに二次が最終なのは、できるだけ選考フローを短くして学生の負担を軽減するためだという。
「もし、AIによって合否が決まれば不信感が生じるかもしれない」と齋藤氏は話す。同社ではそのようなことはしていないため、抵抗感がないのだろう。
面接内容は文字に起こされ、バイタリティーなどの10項目の評価に分類、表示され、点数も出される。評価項目ごとの点数はAIが出しているわけではなく、タレントアンドアセスメントの専門スタッフが自社開発したメソッドに基づき行っている。
また、面接の様子は録画されていて、後から見ることができるので、人事担当者は、文字起こしのデータとともに学生の態度や表情なども確認することが可能だ。
ちなみに、初めてAI面接を導入した年には、録画していることを告知しなかったため、パジャマ姿だったり、タバコを吸ったりしながら面接をする学生がいた。その翌年からは説明会で録画することを伝え、スーツで面接をするように告知したため、そういった学生はいなくなったとのことだ。
次の面接を有意義なものに
AI面接は、あくまで次の対人面接を有意義なものにするための手段と齊藤氏は言う。
「対人面接の場合、例えば学生時代に力を入れたことを聞いたとして、手元のメモに残るのは“サークル”とか“アルバイト”などのキーワードだけだと思います。それで次の面接でまた同じことを聞くことになる。しかし、AI面接は話した内容が全て文字起こしされます。二次面接前に読めば、それを前提にスタートできますので、限られた時間のなかで深掘りができます。それで濃密な面接ができるのですから効率はいい。採用の目的はあくまでも自社にマッチした人材を見極めること。AIはそのための手段として有効だと思います」
ちなみに、AI面接にかかる費用は面接する学生1人に対して1万円程度。面接会場までの交通費や、ドタキャンする学生がいることなどを考慮すると、決して高い金額ではないという。
母集団を増やしたいという点でも効果は大きいとのことだ。先にも触れたが、説明会もWeb上で行うことにした。学生はいつでも説明会の動画を見ることができ、AI面接を受けることができるため、母集団が大きくなるのも納得できるだろう。
「会社説明会の後、Zoomを使ったWeb座談会も開催しています。私ともう1人の人事担当者が学生の疑問に答える場です。Web座談会は内定後にも実施しており、こちらは若手社員と内定者が本音で話し合い、入社前に会社に対する理解を深めてもらうのがねらいです。学生もわれわれも若手社員も、場所を考えることなく参加できます。とくに内定後の座談会は、以前は若手社員のスケジュール調整が大変でした。いまは比較的簡単に、全国の勤務先の若手社員が参加できます」
今後の課題としては、AI面接の認知度がまだ低いため、もっと一般的なものになってほしいと齊藤氏は言う。
「AI面接という響きにはまだ良い印象がないようです。“AIに何が分かるんだ”とか、“AIが採用の合否を決めるのか”とか。これをどう解きほぐすのかが問題ですね」
導入する企業が増えてきたAI面接。学生の応募者が多い企業は、一次面接の足切りに使うところもありそうだ。しかし、それだと学生の反発を招くことになるかもしれない。同社のように二次面接をより有意義にするため使用する企業が増えていくことが、普及に向けて重要な要素となりそうだ。
<会社概要>
●社名:株式会社アキタフーズ
●設立:1966年10月
●事業内容:採卵用初生雛・若雌の生産販売、飼料の製造、鶏卵の自家生産・処理販売
●従業員数:254人
●所在地:広島県福山市光南町3−7−30
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