「洋服の青山」が自前でつくったシェアオフィス スーツ店が“仕事場”を提供する意味:アフターコロナ 仕事はこう変わる(3/3 ページ)
「洋服の青山」を展開する青山商事がシェアオフィス事業に参入、1号店をオープンした。“仕事着”だけでなく、新たな“仕事場”を提供していくという。新規事業立ち上げの狙いと、自社で一から開発した施設の特徴について聞いた。
店舗が狭くなっても選べる商品は充実
既存店のスペースの半分をシェアオフィスとしてリニューアルした一方、通常のビジネスウェアの店舗は狭くなる。店舗運営に支障はないのだろうか。後藤氏は「『デジタル・ラボ』のシステムがあったからこそ、店舗スペースを縮小できた」と話す。
デジタル・ラボとは、実店舗とECを融合させた在庫確認システム。都市部などの狭い店舗の品ぞろえを補うことを目的に、2016年に立ち上げた。店内に複数設置された大型サイネージやタブレット端末によって、「洋服の青山」全785店舗の在庫1000万点以上を確認できる。
来店客は店舗で相談や試着をした上で、豊富な色や柄の商品を画面上に表示させ、好きなものを選ぶことができる。デジタル・ラボを使って購入した商品は、無料で配送となるため、公共交通機関を使って来店する人が多い都市部の店舗で特に利便性が高いという。
水道橋東口店のスペースは半分になったが、デジタル・ラボの導入によって、「選んでもらえる商品や提供できるサービスはむしろ充実したのでは」と後藤氏は話す。
ニーズを捉え、反映させていく
シェアオフィス事業の今後については、「まずは1号店の運営に注力する」(後藤氏)方針だ。利用客へのアンケート調査などによってニーズを把握し、それを施設に反映させながら、都心を中心に次の出店を検討していくという。
現時点では、「静かで落ち着いている」「BGMが良い」といった声がある一方、電源の場所やフリードリンクの種類について具体的な要望があった。そのようなニーズは今後、反映させていくという。また、隣席との仕切りがあるオープン席を使用する人が圧倒的に多いという傾向も、今後の施設づくりの参考になる。
後藤氏は「新型コロナの状況は先が読めず、環境は常に変化している。その変化をいち早くキャッチして、環境に対応できるようなビジネスを展開していきたい」と語る。感染症の拡大という環境変化で影響を受けている業種は多い。さまざまなリスクに備えながら、新しい需要を取り込むための視点があらゆる企業に必要となっている。
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