2015年7月27日以前の記事
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菅首相の“ケータイ値下げ”は、格安SIM市場の崩壊を招く ドコモにも副作用本田雅一の時事想々(2/6 ページ)

KDDIのUQモバイル、ソフトバンクのY!mobileが低価格の大容量プランを発表した。菅首相の「ケータイ値下げ」が一定の範囲で実現したことになるが、こうした政治の介入が、いわゆる格安SIM市場の崩壊を招くかもしれない。

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ケータイ料金引き下げは、格安SIM市場の崩壊をもたらさないか

 菅首相が官房長官時代に、個人的な思いから料金が安くなると発言したのは、総務省が海外の携帯電話料金との比較レポートを出した時の“可能性としての数字”が頭にあったからだ。

 日本の携帯電話回線の品質は極めて高い。その回線品質、あるいはサポートを含めたサービスの質などを考慮したものではなく、深い思慮の上に発言したものではなかったというのが筆者の認識だ。

 ところが消費者の目線からみた携帯電話料金への潜在的な不満、高収益を挙げる携帯電話事業者への不信などは根強く、菅官房長官(当時)の発言は大きく注目を浴びることとなった。

 原因はともかく、世の中の空気感に圧される形で、携帯電話事業者各社は具体的な指示も受けていないのに、忖度(そんたく)の塊で値下げプランを発表した。

 計画になかった値下げをするのだから、当然ながら事業者としての収益性は下がる。菅首相が期待するレベルの大幅値下げに近づくほど収益は悪化する。

 ソフトバンクの場合、携帯電話事業はグループ全体の一部の事業にすぎないが、これが通信専業となれば反応の強さもより敏感だろう。

 しかし、筆者が懸念しているのは大手事業者の業績ではない。最も大きな懸念は携帯電話網を使った通信サービスに“幅”をもたらしてきたMVNOという業態への影響だ。

 UQモバイルとYahoo!モバイルの料金が安価なのは、ビジネスモデルの見直しを図ったからに他ならない。その煽りを受けるのがどこかといえば、大手キャリアから回線を借り受けてサービスを提供するMVNOに他ならない。

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KDDIが発表した、UQモバイルの新プラン「スマホプランV」=同社のニュースリリースより

どこをどう弄っても原価は変わらない

 携帯電話会社はもうけすぎ(筆者はそうは思わないが)という話もあるが、議論をする前に、どんなものにも原価があることは考えておかねばならない。

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