新ワザ「無限くら寿司」の本質が「マスク転売と同じ」と断言できるワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
「トリキの錬金術」が規制されてまもなく、新たなGo To Eatの裏技「“無限”くら寿司」が発見された。くら寿司側が公式サイトで大きく画像を掲示しており、利用を促す姿勢が目立つ。しかし、実質無料となる理由は、政府が財源を支出しているからに他ならない。政府が懐を痛めるということは、私たちの納めた税金がこのような“裏技”に注ぎ込まれるということを意味する。
「トリキの錬金術」が規制されてまもなく、新たなGo To Eatの裏技「“無限”くら寿司」が発見された。これは、くら寿司の公式アプリからGo To Eat予約をすることで、1日2回まで、ポイントがもらえる仕組みを利用する。
公式ホームページによれば、「家族3人の場合、3000ポイントで3000円の会計を行うと、3000円分のポイントが再びもらえる。そのポイントで3000円の会計を行う……」とあり、これを繰り返すことで、文字通り“無限”に実質無料で食事を楽しめるというわけだ。
しかし、実質無料となる理由は、政府が財源を支出しているからに他ならない。政府が懐を痛めるということは、私たちの納めた税金がこのような“裏技”に注ぎ込まれるということを意味する。
免許合宿や商品券付き旅行プランをはじめとしたGo To関連の各種“裏技”は、話題となった当初は、マスク転売と同じく「ルール違反ではなかったものの、モラルが問われた」事例である。今回のGo To Eatをめぐる問題もマスク転売と同様にモラルが問われるべきではないだろうか。
“錬金術”と“無限”の違い
“無限”の事例では、“錬金術”に苦言を呈していた鳥貴族と異なり、くら寿司側が公式サイトで大きく画像を掲示しており、利用を促す姿勢が目立つ。それではなぜ鳥貴族は、苦言を呈したのだろうか。
“トリキの錬金術”が発掘された当時は、食事代が1000円未満でもポイント付与対象となっていた。1品のみ注文して会計をすることで、食事代が無料になるばかりか、追加で673円分のポイントがもらえることから、“錬金術”として話題となった。ところが鳥貴族側が予約サイトに支払う送客手数料は数百円といわれており、一品のみの注文では利益は赤字になる可能性すらある。予約サイトと顧客が利益を享受し、本来救済対象であったはずの鳥貴族側にほとんど給付が行き渡らないため、鳥貴族側は“錬金術”に苦言を呈したのだ。
のちにポイント未満の食事代は対象外となり、このスキームはお蔵入りとなった。しかし、これではポイント給付額と同額の利用は未だ対象となる。
つまりタダで何度でも食事ができる“無限”スキームは規制対象外だ。そして、“無限”の場合は、予約サイトに幾ばくかの送客手数料を支払っても利益が出る構図になる。そのため、公式サイトのTOPページで積極的に利用を促す事業者が現れることも自然なのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ふるさと納税「復活」の泉佐野市を支持すべき2つの理由
ふるさと納税の対象から、泉佐野市を除外した国の行為が違法であることが、最高裁で確定し、泉佐野市が今年のふるさと納税先として復活する見通しとなった。ふるさと納税には批判もあるが、泉佐野市がこれまでに置かれていた状況を鑑みれば、ふるさと納税における制度の範囲内で創意工夫することについて、必ずしも「眉をひそめる」結果であるとはいえない。 - 25%還元のマイナポイント 2100万枚のマイナンバーカードを倍増させられるか
キャッシュレス還元事業が、6月30日に終了した。政府が次に用意した還元策が「マイナポイント」事業だ。マイナンバーカードと任意のキャッシュレス決済サービス1つを紐づけることで、支払額の25%が還元される。前提となるマイナンバーカードの保有者数は2100万人。マイナポイントではこれを約2倍の4000万人に持っていく狙いだ。 - 全てのビジネスパーソンが、東証の“完璧すぎる記者会見”を見るべき理由
10月1日に、東京証券取引所でシステム障害が発生した。しかし、システム障害当日の夜に実施された記者会見は、「完璧」といっても過言ではない内容であり、ビジネスパーソンにとって見習いたい点が数多くみられた。あの会見には、東証のどんな優れたポイントが隠れていたのだろうか。 - 「SBIや三菱UFJも被弾」相次ぐ不正出金のウラに隠れたもう1つの危ない現実
9月7日のドコモ口座による銀行預金の不正出金問題がくすぶり続けている中、16日にはSBI証券の顧客口座から、不正に計9860万円が引き出される事件が発生した。今回は、これらの不正出金問題を振り返りつつ、巷で見過ごされがちなもう1つの危ない現実についても確認したい。 - 総合商社は「三菱」から「伊藤忠」時代に? 5大商社は大幅高
「投資の神様」という異名を持つ、ウォーレン・バフェット氏の「バークシャー・ハサウェイ」が、8月31日に三菱商事や伊藤忠商事といった、いわゆる「5大商社」の発行済株式総数の5%超を子会社で取得したという。5大商社の株価は、この発表が行われた31日以降、値上がりを続けた。なぜ、バフェット氏は日本の商社に目をつけたのだろうか。 - Go To “東京除外”で影響を受ける県・受けない県ランキング
「地方の観光産業を救う」という名目で約1.7兆円もの予算が計上されたGo Toトラベルキャンペーンだが、人口最多の東京都が除外されたことで、本キャンペーンにおける経済効果の見積もりは当初から下方修正せざるを得ないだろう。東京都の除外で影響を受ける可能性が高いと考えられる都道府県と、そうでない都道府県を確認していきたい。 - 1万円の納豆生涯無料パスポート、適正価格は何円?
1万円で納豆定食が生涯無料で食べられるパスポート。意図はともかく、金額設定がおかしく、利回り計算するとあまりに無謀だった。では、適正な価格はいったいいくらなのだろうか?