だから、多くのアパレルは苦戦することに:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
名門ブランド「レナウン」の消滅が決まった。このほかにも多くのアパレルが苦戦しているが、なぜこのような事態に陥ったのか。店舗数の多さが関係しているようで……。
「強み」と「弱み」は表裏一体
それが大袈裟ではないことを示す数字が、日本のEC化率だ。経産省によれば、2019年度のEC化率は6.76%だが、中国のEC化率はなんと6倍の36.6%、米国では11%。距離的にもビジネス的にも結びつきの強いこの2国と比べると、日本のEC化は非常に遅れている「後進国」という印象を受ける。
ただ、少し見方を変えると、これは「EC化しなくてもそれほど困らない」ことが大きいのだ。ネットでポチポチやらなくても少し外出をすれば、さまざまなブランドの店舗にたどり着く。スマホの画面では、試着した感じや質感は分からないので、「やっぱり店がいいよね」となる。店側も消費者側も最新デジタルの恩恵を感じられないのである。
つまり、日本はリアル店舗のインフラ化が他国と比べて異常なほど高度に進化していて、その「強み」のせいでEC化の足を引っ張っているのだ。サラリーマンの社畜化が他国と比べて進んでいることで、リモート化がなかなか進まないのと構図的には全く同じである。
ただ、「強み」というのは「弱み」と表裏一体である。この半年ほどで痛感していると思うが、リアル店舗は、感染症に弱い。陽性の人間が急増すれば消費マインドも冷え込んで、営業自粛や客足激減で、一等地であればあるほど高い家賃や人件費が重い負担になる。そうなると当然、閉店や休業という経営判断に至って「リアル店舗」は急速に縮小していくのだ。
例えば、カジュアル衣料大手「H&M」は世界に展開する5000店舗の5%に当たる250店舗を来年閉鎖すると発表した。また、ギャップは北米で運営する「GAP」と「Banana Republic」のうち約350店舗を23年度末(24年1月期)までに閉鎖するという。
日本は人口比で見れば、米国の2倍以上のアパレルが溢れかえっている。高いところから転落したほうがよりダメージが大きいように、リアル店舗依存の強い日本もコロナのダメージはかなり深刻なはずだが、まだ米国や海外のような大量閉店にはいたっていない。
関連記事
- 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - セブンの「ステルス値上げ」を疑う人が、後を絶たない理由
消費者が知らない間に、こっそりと量を減らして価格は据え置き――。セブン-イレブンが「ステルス値上げ」をしているのではないかと叩かれている。なぜ、このように疑われているのか。筆者の窪田氏は、このように分析していて……。 - 「オレは絶対に悪くない!」という“他責おじさん”が、なぜ出世するのか
「オレは絶対に悪くないからな!」――。会社の幹部や上司の顔を思い出して、「いるいる。ウチの会社にもたくさんいるよ」と感じた人もいるのでは。なぜ、他人のせいにする人が出世するのか。その背景を調べてみると……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.