“トリキの錬金術”や“無限くら寿司”で課題噴出 Go To Eatが飲食店事業者を救わない、これだけの理由:ここがヘンだよ「Go To Eat」(2/4 ページ)
“トリキの錬金術”や“無限くら寿司”などで多くの課題が出ているGo To Eat。不公平なばらまきとの指摘も多い。オンライン飲食予約事業では予約サイト事業者は儲(もう)かる一方、地方に住む高齢の経営者などには使いづらい制度だ。問題点を探った。
オンライン予約事業は誰のためなのか
日本フードサービス協会では、「Go To Eatキャンペーン」の初期段階から、農林水産省との打ち合わせやヒアリングに応じてきた。しかし、最初の話では飲食店事業者のための事業とはいえないものだったと石井常務は説明する。
「Go To Eatの予算は約2000億円といわれ、計画段階で国が示していた内訳では、オンライン飲食予約事業が1900億円、食事券事業はわずか100億円でした」
オンライン飲食予約事業は、そもそも全ての飲食店が参加できるものではない。参加してもどれだけの恩恵があるのかは分からず、個々の店舗で効果にばらつきが出てくる。その一方で、多くの予約サイトの事業者には送金手数料が入る。確実に儲(もう)かるのは、飲食店ではなく予約サイト事業者なのだ。
「私どもとしては、地方の飲食店の多くは予約サイトを利用していないし、高齢の経営者は使いづらいので、予算の組み替えが必要だと再三、農林水産省に申し上げました」
最終的にはオンライン飲食予約事業が616億円、食事券事業が868億円となった。しかし、石井常務は語る。
「それでもオンライン予約に多額の予算が使われることは、いまだにおかしいと考えています。税金の無駄使いではないでしょうか」
感染防止ガイドラインが参加要件に「利用」された
一方、飲食店が困る事態も起きている。困る事態とは、「Go To Eatキャンペーン」に登録する場合、飲食店が感染防止のガイドラインの全ての項目を守っているかどうかによって、登録の可否が判断されていることだ。
「外食業の事業継続のためのガイドライン」は、日本フードサービス協会と、全国生活衛生同業組合中央会が共同で作成した。消毒液の用意やマスクの着用、アクリル板などでパーティションを設けることなどを感染防止策として盛り込んでいる。ガイドラインは感染防止のためにできることを取り組んでいこうと、業界団体が自ら考えたガイドラインだった。
ところがガイドラインは、いつのまにか「Go To Eatキャンペーン」に飲食店が参加するための要件に定められていた。その要件を満たしていないからとの理由で、登録できない飲食店が出てきているという。
「ガイドラインは飲食店に対して義務化されるものではないことを、作成に当たって厚生労働省にも農林水産省にも、経済産業省にも確認していました。あくまでもガイドラインであって、あの中でできるものは個々のお店の事情に応じて実施してくださいというものです。
それがいつのまにか、Go To Eatの参加要件になっているので困惑しています。Go To Eatを念頭において作ったガイドラインではありません。小さな飲食店はただでさえ経営が大変で、アクリル板などを用意する追加コストを負担できないお店も当然あります。ガイドラインの強制という要件は緩和することも必要です」
実際、小規模な飲食店から日本フードサービス協会に対して、「食事券事業の登録申請を認めてもらえない」との相談がきているという。協会では相談があった飲食店がある都道府県の事務局に対し、ガイドラインは登録の要件にするべきものではないことを直接説明している。
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