2020年の米大統領選はまれにみる大接戦に:市川レポート 経済・相場のここに注目
米大統領選は11月3日に投開票が行われましたが、大方の予想に反し、まれにみる大接戦となりました。まだ勝者は確定していません。
日本時間11月5日午前7時時点でまだ勝者は確定しておらず、激戦州中心に6州で集計が続く
米大統領選は11月3日に投開票が行われましたが、大方の予想に反し、まれにみる大接戦となりました。報道によると、日本時間の11月5日午前7時時点における選挙人の獲得数は、民主党のバイデン候補が253人、共和党のトランプ候補が214人となっています(図表1)。選挙人の総数は538人で、このうち過半数の270人以上を獲得した候補が当選となるため、まだ勝者は確定していません。
引き続き集計が行われているのは、東部のペンシルベニア州(選挙人の数は20人、以下数字のみ)、南部のジョージア州(16)とノースカロライナ州(15)、南西部のアリゾナ州(11)とネバダ州(6)、アラスカ州(3)の6州です。アラスカ州を除く5州は、今回の選挙戦で激戦州とされており、このうちペンシルベニア州とネバダ州は、民主・共和両党の間で支持が揺れる、いわゆる「スイングステート」です。
トランプ氏は予想通り一方的に勝利を宣言し法廷闘争も示唆、下院は引き続き民主党が優勢に
この先、残り6州の開票が進んで行くことになりますが、バイデン氏、トランプ氏、いずれの候補も勝者となる可能性は残っています。ペンシルベニア州は、トランプ氏優勢の模様ですが、郵便投票の集計が加わることで、バイデン氏がどの程度、追い上げることができるか注目されます。なお、トランプ氏は予想通り、一方的な勝利宣言を行って集計の中止を求め、法廷闘争も示唆しています。
一方、議会選挙に目を向けると、今回、下院は定数435議席のうち全議席が、上院は定数100議席のうち約3分の1の35議席が改選されます。下院の過半数は218議席ですが、日本時間の11月5日午前7時時点で、民主党が203議席(改選前232議席)、共和党が188議席(同197議席)となっており、下院では引き続き、民主党が多数議席を占めるとの見方が優勢です。
上院は共和党が多数議席の可能性、市場はいいとこどりの反応だが、集計結果の見極めが必要
上院の過半数は51議席ですが、日本時間の11月5日午前7時時点で、民主党が47議席(改選前47議席、民主系無所属2議席を含む)、共和党が48議席(同53議席)となっています。まだ結果が確定していない南部のジョージア州とノースカロライナ州では、共和党が優勢との見方が多いように思われます。そのため、上院も引き続き、共和党が多数議席を占める可能性がやや高まっています。
ここまでの金融市場の反応は、おおむね「株高」、「債券高(利回り低下)」、「米ドルと日本円の下落」となっています(図表2)。民主党バイデン氏圧勝のシナリオが後退したことで、増税と過度な財政支出拡大への懸念が和らぎ、株高と債券利回り低下につながったと思われます。為替はこれらの動きを受け、リスクオン(選好)で反応したとみています。ただ、選挙結果はまだ確定していないため、集計結果を慎重に見極める必要があると考えます。
市川 雅浩(いちかわまさひろ) 三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト
旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。
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