在宅勤務なら大丈夫でしょ! 「100万人の引きこもり」を活用できるのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
日本には「引きこもりが100万人いる」と言われている。人手不足が叫ばれている中、「過疎地で、引きこもりの方たちを活用しては?」といった声が出ているが、実現するのだろうか。筆者の窪田氏は否定的に考えていて……。
地方に移住したらどうなるか
内閣府が2016年に発表した15〜39歳を対象とした引きこもりの調査では、「趣味の用事のときだけ外出する」が67.3%、「近所のコンビニなどには出かける」が22.4%となっていて、「自室から出るが、家から出ない」は10.2%しかない。
40〜64歳という「高齢引きこもり」も同様だ。19年に発表された調査によれば、「趣味の用事のときだけ外出する」が40.4%、「近所のコンビニなどには出かける」が44.7%となっていて、「自室から出るが、家から出ない」は10.6%しかいない。
つまり、「引きこもり」という悪意のある呼び方が定着してしまったせいで、何やらずっと家や自室から出てこない人のような印象を世間は植え付けられてしまっているが、実はそう呼ばれる人のほとんどは、対人関係が苦手だとか、定職に就いていないだけで、普通の生活を送っている人となんら変わらない日常を送っているのだ。
では、このような「普通の人たち」100万人を、どうせ引きこもっているんだから過疎地の「歩哨(ほしょう)」にでもなったらいかがでしょうか、なんて地方移住を勧めたらどういうことが起きるだろうか。
先ほどの石井氏のように充実した日々を送れる人もいるだろう。が、「田舎暮らし」に挫折する人が後を絶たないのと同じで、過疎地から逃げ出す人もかなりいるはずだ。そもそも、「なんで俺がこんな不便な場所に住まなきゃいけないんだ!」というすさまじい反発が起こるはずだ。
当然だ。彼らのほとんどは「引きこもり」というレッテルを勝手に貼られているが、腹が減ればコンビニに出歩くし、好きなアイドルのコンサートに出かけるときもある。ときには気の合う友人と会ったりもする。働いていなかったり、経済的に自立をしていなかったりするだけで、どこにでもいる「普通の人々」であり、「世捨て人」ではないからだ。
このように既にそれぞれのライフスタイルで生きている100万人を、「土地がもらえるぞ」「田舎暮らしはいいぞ」と移住させたとしても、あまりいい結果は生まないだろう。むしろ、社会への憎悪や反発が増す可能性のほうが高い。
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