上場延期で衝撃、中国・アントを知る5つのキーワード:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/6 ページ)
史上最大のIPOと注目されていた中国アリババの金融子会社アント・グループの上場延期が11月3日に発表された。ジャック・マー氏ら幹部3人が前日に金融当局の指導を受け、上場計画の見直しを迫られたことが理由だ。本稿ではアントの歴史や事業構造、今後の見通しなどを5つのキーワードからひも解いていく。
3.社名変更で「決済」→「金融」→「テクノロジー」へ
アント・グループは設立以来、数度社名を変更している。設立時は「アリペイ」で、サービスの名前を企業名にしていたが、13年に「小微金融服务集团」、14年にアント・フィナンシャルサービス(螞蟻金融服務集団)に変更した。
この頃はスマホの普及でアリペイもECの決済ツールではなく、QRコード決済アプリに変貌しており、WeChat Payと“決済大戦”を繰り広げていた。取引から得られたビッグデータを活用して、融資や投資のプラットフォームとしての顔も持つようになっていた。まさに、「アリ」のような個人・零細事業者向けの金融プラットフォームを目指すビジョンを反映した社名変更だった。
次の社名変更は20年6月。社名から「金融」を外してアント・グループ(螞蟻集団)とした。アントは17年、「フィンテックからテックフィン」にシフトすると宣言した。企業の「金融色」を強めると、当局からの規制が強まるとの懸念も以前からあったのだろう。同社は「アント・グループ」への社名変更とともに、金融のデジタル化を支援するテクノロジー企業との立ち位置を明確にした。
一方で、11月14日、中国人民政治協商会議常任委員で、中国銀行行監督管理委員会元主席の尚福林氏は中国で開かれたフォーラムに登壇し、「伝統的な金融業態であろうが、アントのような業態であろうが、金融業のルールを順守しなければならない。市場効率を高めつつ、リスクを防ぐ必要がある」と発言しており、アントの事業領域が金融とテクノロジーのグレーゾーンに位置することが、今回の上場延期の背景になったことが読み取れる。
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